研究課題/領域番号 |
16K07445
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松尾 朋彦 関西医科大学, 医学部, 研究員 (90641754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嗅覚受容体 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
本年度は、in vitroのスクリーニングで同定された、生理活性を持つ匂い物質と結合する嗅覚受容体のin vivoにおける解析を試みた。このためにまず、同定された受容体を発現する嗅神経細胞を蛍光標識するために、BACトランスジェニックマウスの作製を行った。このトランスジェニックマウスにおいては、CFP蛍光タンパク質およびCreリコンビナーゼが目的受容体とポリシストロニックにコードされ共発現することが期待される。これまでに6種類のF0マウスが得られ、野生型マウスと掛け合わせたのちにF1マウスの解析を行った。このうち2系統においてCFPの発現が観察され、嗅神経細胞の投射先である嗅球において糸球体への軸索の投射が見られた。しかしながら、嗅球におけるCFP蛍光が非常に弱く、投射糸球体を簡便に同定することは困難であった。 そこで次に、この匂い物質の構造類似体であり、かつマウスにおいて恐怖情動を惹起する匂い物質を用いた解析を試みた。この恐怖誘発物質の機能的な受容体であることが示唆されていた4種類の嗅覚受容体のノックアウトマウスを作製し、恐怖応答に変化が見られるかを調べることにした。ノックアウトマウスの作製にはCRISPR/Cas9システムを用い、4種類の嗅覚受容体をターゲットとしたガイドRNAを同時に導入した。この結果、3種類の嗅覚受容体においては遺伝子の前半部においてフレームシフトを誘発する変異が確認された。現在、これらマウス同士を掛け合わせることで、ホモに変異を持つ嗅覚受容体のノックアウトマウスの作製を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嗅覚受容体を発現する嗅神経細胞を標識するためのトランスジェニックマウスの作製を行い、複数系統得ることができた。しかし、これら嗅神経細胞の投射先である嗅球上の糸球体の同定を容易に行うことが難しかった。嗅覚受容体のノックアウトマウスの作製については、複数のガイドRNAを用いた方法は順調に進んでいるが、現在のところ目的とした4種類のうち3種類の受容体の変異マウスのみが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
3種類の嗅覚受容体のノックアウトマウスを掛け合わせを行うことで作製する。その後、恐怖を惹起する匂い物質に対するノックアウトマウスの行動解析を行うことで、匂い物質と嗅覚受容体の機能的な結び付けを試みる。1種類の匂い物質に対して複数の嗅覚受容体が結合することも知られていることから、必要があれば2重あるいは3重の受容体ノックアウトマウスの作製も試み、生理活性を持つ匂い物質における嗅覚受容体のコーディングロジックの解明も目指す。
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