最終年度の成果:1)細胞内局在の解析:GFPとの融合タンパク質の原糸体細胞内での一過的発現により、PAS-Histidine Kinase 2(PHK2)の細胞内局在部位を推定した。rATPase-RFP融合タンパク質由来の蛍光パタンとの比較から、PHK2は核に局在すると推定された。2)逆遺伝学による機能解析:2017年度までに、PHK1/PHK2はカウロネマ側枝始原細胞(SIBC)の分岐の抑制により茎葉体形成を遅らせることを示していた。最終年度ではさらに、PHK1/PHK2は赤色光によるSIBC誘導を抑制することを明らかにした。一方で、茎葉体形成の制御過程をさらに特定するため、茎葉体原基のbudの形成率を野生型株とPHK1/PHK2二重破壊株との間で比べたが、有意な差は見られなかった。3)概日時計との機能的関係:PHK1/PHK2と相互作用するHPt2タンパク質について、時計タンパク質Pseudo-Response Regulator 2(PRR2)との相互作用を酵母2ハイブリッド系で調べたが、相互作用は認められなかった(ただし、コケの他の2つのHPt、HPt1とHPt3もPRR2とも相互作用を示さなかったため、この結果はさらに検証が必要であると考えられた)。 事業期間全体の研究成果:PASドメインを持つヒスチジンキナーゼPHK1とPHK2は、茎葉体形成に対して好気ー嫌気条件で逆の制御を及ぼす興味深い因子であることを示し、さらに細胞内局在の検証や相互作用相手の同定などにより生理機能を裏打ちする分子機構を明らかにできた。一方で、高振幅の日周変動発現を示す点や、遺伝子破壊株で時計遺伝子CCA1aの転写が促進される点などから、PHK1/PHK2が概日時計機構と密接な関係があることが示唆された。植物の時計機構の進化の一端を明らかにした点で意義・重要性があると言える。
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