研究実績の概要 |
我々は、緑藻クラミドモナスを概日時計研究の新しいモデル生物として確立し、研究を進めてきた。その過程で、時計タンパク質ROC15の分解が光で誘導されることを発見した(Niwa and Matsuo et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2013, 110:13666-71)。この現象は幅広い波長の光で誘導されるが、特に赤色光で強く誘導される。興味深いことに、このような波長特性を示す光受容体はクラミドモナスでは知られておらず、未知の光受容・伝達経路の存在が示唆された。申請者らは、最近、この経路の解明の手がかりを得た。本研究では、それを発展させ、未知の光受容・伝達経路の全容解明を目指す。 今年度はROC15とホタルルシフェラーゼの融合タンパク質レポーターを用いて、2つの新しい発見があった。一つは、新規の光応答変異体の分離に成功したことである。この変異体においては赤色光、青色光の応答がいずれも消失していた。また、原因遺伝子の同定にも成功した。原因遺伝子は新規タンパク質をコードしており、アミノ酸配列を解析した結果、緑藻のみに保存されたモチーフを有することがわかった。もう一つの発見は、これまで青色光受容体として知られていたタンパク質が、本研究の対象とする現象においては、赤色光の応答にも必須の役割を果たしていることを明らかにした。これら2つの発見は、いずれも本研究を遂行する上で非常に重要な発見であり、未知の光受容伝達経路の解明につながると期待される。
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