ROSあるいは8-oxoGを生じさせないような新たな変異株の網羅的検索:大腸菌内で活性酸素(ROS)あるいは8-oxoGの生成に関わる遺伝子を網羅的に検索するため、ROSあるいは8-oxoG増加によるmutT欠損株の突然変異の上昇が、目的遺伝子の欠損によって抑制されると想定し、その表現型(突然変異)を指標にして変異株を検出する系を構築した。 網羅的欠損株ライブラリーであるKeio clone(3909 clones)を用い、全cloneのmutT geneを1つ1つ、P1 transductionによってCm^r geneに置き換えた二重変異株を作成した。それらの中から自然突然変異頻度がmutT遺伝子欠損導入によっても、なお低い株をリファンピシリン耐性を指標として網羅的に検索した。現在、全部で14個の変異株を分離できたが、そのうち10個はenergy metabolism に関与する遺伝子、残り4個は膜構造に関連する遺伝子におちた。 これら14個の遺伝子それぞれについて、現在個別に解析を進めている。
その他の研究成果:上記の他にROSにより酸化損傷を受けたRNAに対応する生体防御機構の解析で新たな進展が見られた。8-oxoGを含むRNAオリゴマーをプローブに用い、ヒト細胞抽出液から8-oxoGを特異的に認識し結合する新規のタンパクを同定した。このタンパクは8oxoGを含む1本鎖のRNAおよびDNAオリゴには結合するが、2本鎖DNAには結合しない。また、このタンパクを欠損する変異株は野生株に比べ低濃度の過酸化水素水に対し抵抗性を示した。このことから、このタンパクはアポトーシスを介して、酸化RNA特異的な防御を荷うことが考えられる。
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