研究課題/領域番号 |
16K07454
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
將口 栄一 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (90378563)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 渦鞭毛藻 / エピゲノム / サンゴ / ヒドロキシメチルウラシル / メチルシトシン / 核ゲノム |
研究実績の概要 |
サンゴに共生する褐虫藻を含む渦鞭毛藻類のDNAには、ヒドロキシメチルウラシルという、チミンが修飾された塩基が豊富に存在することが、40年以上前から知られている。しかしながらそのDNA修飾の役割についてはよく分かっていない。本研究では、ゲノムを解読した、サンゴに共生する渦鞭毛藻類の褐虫藻を用いて、DNA修飾を受ける領域を網羅的に決定し、渦鞭毛藻がなぜそのような修飾DNAを保持しているのかを解明する。さらにDNA修飾酵素遺伝子の同定を目指す。これを研究の基盤として、ユニークな構造を持つ褐虫藻の核ゲノムがストレスや環境の変化に対しどのように反応しているのかを明らかにする。 ゲノムを解読した共生性渦鞭毛藻Symbiodinium minutumのDNAがどの程度のDNA修飾を受けているのかを高速液体クロマトグラフィーを用いて調べた。その結果、25℃の培養条件下において約10%のチミンがヒドロキシメチルウラシルへと修飾されていた。一方で、シトシンのメチル化は1%以下であった。次にこのDNA修飾率が温度やUVのストレスによりどのように変化するのかを解析した。温度ストレスによりDNA修飾の割合が増加する可能性を示すデータが得られた。さらにS. minutumとは別のSymbiodinium2種のゲノムを解読し、それら2種のDNA修飾についての解析を行った。 また寄生性トリパノソーマ類において、ヒドロキシメチルへの修飾に関わる酵素が同定されてきている。それらのゲノムとの比較解析から、DNA修飾に関わる可能性のある酵素遺伝子が褐虫藻のゲノムには3個コードされていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNA修飾の変化が温度ストレスにより起こる可能性が質量分析の結果から示唆された。このため、DNA修飾領域を1分子リアルタイムシーケンサーにより決定していくことは現時点では困難であると考えた。一方で、イルミナシーケンサーによりDNA修飾領域を決定する方法が報告されてきており、計画とは異なる新しい方法で解析を行うことにした。イルミナシーケンサーを用いることにより、ゲノムに対して高カバーレッジのデータを得ることが可能となる。より信頼性の高い結果を得ることを目指し、新しい手法のための予備実験に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
最近になって報告されてきているヒドロキシメチルウラシル領域をイルミナによって決定するためのライブラリ作成を検討していく。またチミンのヒドロキシメチルウラシルへの修飾に関わる酵素遺伝子の機能解析をバクテリアや酵母細胞での発現系を構築することにより行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1分子リアルタイムDNAシーケンサー(PacBio)によるヒドロキシメチルウラシル修飾領域の決定が困難であることが分かった。このためPacBio RSIIシーケンシング用試薬類を購入する予定であったが、それをとりやめた。今年度、新しい手法を用いたライブラリ作成を成功させ、イルミナ用のシーケンシング試薬を購入する予定としたため。
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