研究課題
サンゴに共生する渦鞭毛藻類の褐虫藻Symbiodiniaceaeは、少なくとも15のグループに分けることができ、多様である。しかしながら、そのゲノム基盤についてはよく分かっていなかった。本研究において褐虫藻の進化過程において最初に分岐したと考えられているグループと最後に分岐したグループからの2種の全ゲノム概要配列(767 Mbと705 Mb)を決定し、報告した。そのゲノムの比較解析により、特に、二次共生により紅藻から獲得したと考えられる遺伝子の重複や損失が褐虫藻の多様化に大きく影響してきた可能性があることを明らかにした。さらに解読した褐虫藻ゲノムを利用し、毒合成を含む二次代謝に関わる酵素遺伝子群を明らかにした。沖縄に生息する造礁サンゴAcropora digitiferaの多様性について、155個体の全ゲノム情報を用いて詳しく解析が行われ、地域ごとの4つの集団からなることが明らかにされてきている (Shinzato et al., 2016)。しかしそのサンゴに共生している褐虫藻の多様性についてはゲノムレベルでの解析が進んでいなかった。解読してきた褐虫藻ゲノムを参照することにより、サンゴA. digitiferaの150個体に共生している褐虫藻のオルガネラのゲノム配列の多様性を解析した。共生している褐虫藻の集団は、その宿主のサンゴのような地域ごとの4つの集団には分かれず、宿主との共進化は示唆されなかった。またこれまでに報告してきた褐虫藻のオルガネラゲノム(ミトコンドリアと葉緑体)とトランスクリプトームの配列を参照し、RNA機能が関わると考えられるエピジェネティックな機構とオルガネラゲノムの遺伝的多様性との関係を明らかにした。このように本研究は、引き続き沖縄のサンゴに共生する褐虫藻のエピゲノムの多様性の比較解析を行う上での重要なゲノム基盤を明らかにした。
研究発表:Eiichi Shoguchi. Comparative genomics of the coral symbiotic dinoflagellates: sunscreen biosynthesis and toxin-related genes. Dec. 7, 2018. Dept. of Biochemistry and Microbiol., Rutgers Univ.
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