研究課題
グアニン4重鎖(G4)構造は代表的な非B型DNA構造でありヒトゲノム上に35万カ所以上も存在すると推定されているが、実際それがゲノム上にどのように分布し、どのような生物学的な意義を有するかは未知であった。最近申請者らは複製タイミングを制御する進化的に保存された因子Rif1は、遺伝子間に存在するG4構造を認識・結合し染色体ドメイン構造を制御することにより複製タイミングを規定することを見出した。そこで本研究では、Rif1とG4構造の相互作用を生化学的に詳細に解析するとともに、Rif1とG4相互作用が染色体高次構造を制御するメカニズムを解明する。分裂酵母Rif1の種々の欠失誘導体を作製、精製しその活性を生化学的に解析した。その結果下記があきらかとなった。(1)C末端229アミノ酸(1172-1400)がG4と結合できる。 (2)C末端90アミノ酸のみで多量体化(8, 16量体化)できる。 (3)N末端444のアミノ酸(1-444; HEAT repeat構造)もG4と結合できるが、特異性および親和性が低い。 (4)Rif1は同時に複数のG4DNAと結合できることをpull down assayで証明した。 (5)C端に近い保存配列を変異すると、DNA結合能が大きく低下するとともに、8, 16量体化形成能が喪失した。 (6)転写によりRif1BS(Rif1結合配列)上に形成されるG4構造にも、Rif1は結合できる。
2: おおむね順調に進展している
これまで順調に実験が進行し、Rif1の機能ドメインが明らかとなった。ただ、全長のRif1は分解しやすく、分解産物と完全に分離することがいまだ困難である。
今後、さらにC端のG4結合ドメイン、多量体化ドメインを短く限定するとともに、これらのドメインとG4の複合体の構造解析を行う。精製度の高い全長Rif1を精製するために、今後、切断が起こらないような変異Rif1を作製するなどして分解産物を含まないRif1の精製をめざす。
タンパク分解のため全長のRif1の精製に困難が生じた。そのため抽出方法などを検討したが、まだ解決せず、精製の過程に遅れを生じた。そのため予定してた精製のためのレジン、試薬などの購入をしなかった。
分解を防ぐ条件を見出し精製をすすめる。そのために必要なニッケルカラム、Flag抗体カラム、溶出に必要なFlagペプチドの購入にあてる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Mol. Cell. Biol.
巻: MCB.00355-16. ページ: ー
10.1128/MCB.00355-16.
Nature Communications
巻: 7:12135 ページ: ー
10.1038/ncomms12135.
http://www.igakuken.or.jp/genome/