研究課題/領域番号 |
16K07457
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
織田 信弥 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 腫瘍遺伝学研究室長 (40333372)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | リピート配列 / DNA複製 / DNAポリメラーゼ / 複製エラー / マイクロサテライト不安定性 / ゲノム不安定性 / リピート病 |
研究実績の概要 |
短タンデムリピート(short tandem repeat, STR)は、DNA 複製の際にエラーが頻発する複製困難な配列であるにもかかわらず、真核生物ゲノム上に夥しい数が分布する。STR の生理機能は不明だが、その変化が一部のヒトがんや神経・筋疾患の病因となる。STR の変化の実態とその分子機序の解明が待たれるが、これまでの実際にin vivoで生じたリピート変化を帰納的に観察する研究には限界があった。本研究では、はじめてin vitro DNA 複製系を用い、リピートの普遍的な変化の動態をin vitro で観察し、変化を規定する分子要因を演繹的に明らかにすることを目的とした。初年度の計画(第1ステップ)はまず、複製型ポリメラーゼはどのようにリピート配列を複製するのか、1) 複製効率の変化と要因、2) 複製エラーの発生頻度と要因をin vitroで明らかにすることを目標とした。この目的に必要なさまざま性質のリピート配列をもつM13由来環状2本鎖DNA基質の作成に交付決定後すぐさま着手したが、進捗が遅れていた。今年度は、連携研究者と議論を重ね、さまざまなアッセイの基質として応用可能な統合型多目的2本鎖環状DNA基質をpBluescriptを雛型にその配列を多地点で改変することにより作成した。すでに合成と調製を終えており、今後この基質を用いたgap-filling assay系を構築することで、研究の進捗が期待される。一方、第3ステップで予定する課題(リピート不安定性疾患における分子異常の同定)に向け、ヒト諸疾患におけるリピート不安定性検索を平行して続けた結果、多発性骨髄腫においてもリピート不安定性が観察されることを見出し、その解析結果を公表した(Miyashita K et al. Leuk Lymphoma 31: 1-6, 2018)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度の計画(第1ステップ)はまず、複製型ポリメラーゼはどのようにリピート配列を複製するのか、1) 複製効率の変化と要因、2) 複製エラーの発生頻度と要因をin vitroで明らかにすることを目標とした。この目的に必要なさまざま性質のリピート配列をもつM13由来環状2本鎖DNA基質の作成に交付決定後すぐさま着手したが、進捗が遅れていた。今年度は、連携研究者と議論を重ね、様々なアッセイの基質として応用可能な統合型多目的2本鎖環状DNA基質をpBluescriptを雛型にその配列を多地点で改変することにより作成した。すでに合成と調製を終えており、今後この基質を用いたgap-filling assay系を構築することで、研究の進捗が期待される。一方、第3ステップで予定する課題(リピート不安定性疾患における分子異常の同定)に向け、ヒト諸疾患におけるリピート不安定性検索を平行して続けた結果、多発性骨髄腫においてもリピート不安定性が観察されることを見出し、その解析結果を公表した(Miyashita K et al. Leuk Lymphoma 31: 1-6, 2018)。
|
今後の研究の推進方策 |
今回新規合成された統合型多目的2本鎖環状DNA基質にさまざま性質のリピート配列をサブクローニングすることで基質を至急完成させ、これを用いたgap-filling assay系を構築、集中的にアッセイを行っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
M13由来環状2本鎖DNA基質の作成に交付決定後すぐさま着手したが、諸般の理由から進捗が遅れていた。今年度、統合型多目的2本鎖環状DNA基質の合成と調製を終えたが、これを用いたアッセイはまだ実施できておらず、試薬その他の消耗品の使用が少なく、残額が生じた。今後この基質を用いたアッセイ系を構築し、アッセイを多数実施することで、研究の進捗が期待される。
|