研究実績の概要 |
分化した体細胞のエピゲノム情報の系統解析からin silicoで哺乳類の細胞系譜を構築し、さらに推定された細胞系譜の祖先節の形質状態、すなわち発生過程の細胞のエピジェネティック修飾の状態を推定することを研究目的とする。エピジェネティック修修飾の状態は、ゲノム上の各遺伝子の発現状態を反映していると考えられることから、本研究により個体発生過程の理解が進むことが期待される。これまでに、DNAメチル化情報の系統解析による細胞分化過程推定の可能性を示してきたが、本研究課題ではヒストン修飾情報について検討を行う。 平成28年度は、細胞系譜がよく研究されており、また全ゲノムのヒストン修飾情報が公開されているヒトの血球系細胞をモデルケースとして解析を行い、以下の成果を得た。 ・個体によってヒストン修飾位置が異なる変動サイトがみられた。 ・個体差のない一致サイトで系統解析を行ったところ、H3K27ac, H3K27me3, H3K36me3, H3K4me1, H3K4me3についてはおおむね既知の細胞系譜を反映する樹形が得られた。一方でH3K9me3については解像度の低い、既知の細胞系譜をあまりよく反映しない樹形が得られた。 ・系統樹上独立した系統で同様の変化(ヒストン修飾ON/OFF)がおきたホモプラシーサイトの有無を確認したところ、修飾範囲の狭い(短い)ものほどホモプラシーが多い傾向がみられた。H3K9me3はホモプラシーサイトの割合が多かった。
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