研究課題
セキツイ動物間で高度に保存された超保存配列の機能と相互作用を明らかにするため,ヒト超保存配列とGAL4遺伝子との融合遺伝子を組み込んだ組換え体ショウジョウバエを約400系統作製し,44種の配列についてエンハンサー活性を調査した.調査したすべての配列で胚あるいは3齢幼虫のひとつ以上の組織において活性が認められた.これはヒト由来のゲノム配列がショウジョウバエという異種の遺伝的背景のもとでエンハンサー活性を示すことができたと同時に,このアッセイ系がエンハンサー活性を調査するうえで優れて,有効であることを示している.さらに,3齢幼虫において,ほぼすべての配列が脳をふくむ中枢神経系組織で発現を誘導したことから,超保存配列と脳の遺伝子発現制御との関連が示唆される.FANTOMプロジェクトにおいて両方向性の転写物(eRNA)の有無から41の器官・組織のヒトエンハンサー候補配列が同定されている.これまでの超保存配列のショウジョウバエ細胞での発現誘導能との比較のため,ヒトの脳のエンハンサー候補2配列と精巣エンハンサー候補2配列,合計4種の配列を5種のコアプロモーターとの組み合わせでエンハンサー活性をショウジョウバエで調査した.精巣エンハンサー候補の1配列を除く3配列で脳および腹部神経節でエンハンサー活性を示した.一方,いずれの配列も,いずれのプロモーターとの組み合わせでも精巣での発現誘導能は認められなかった.興味深いことに3配列の脳での発現に類似のパターンが認められた.異なる配列であっても共通因子が働いている可能性を示唆する.今後,この一般性を検証するとともに,超保存配列との発現比較をおこなう必要がある.
3: やや遅れている
エンハンサー活性だけでなく,サイレンサー活性についても調査することを計画したが,コンストラクトが長くなるために作成に時間を要しただけでなく,一様に,広く発現を誘導する遍在プロモーター下でQF遺伝子を発現する組換え体の作出に手間取っている.機能的なレポーター分子(GFP)の発現が胚では遅れることから,今後は幼虫期での発現観察に集中すべきであろう.
FANTOMで同定される組織特異的エンハンサーと超保存配列との脳での共通発現の有無の検証を進め,共通作用因子同定につなげる.幼虫の脳あるいは成虫原基でのサイレンサーアッセイ系を確立,超保存配列の調査につなげる.
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PLoS ONE
巻: 13 ページ: e0192096
10.1371/journal.pone.0192096
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 4607
10.1038/s41598-017-04869-1