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2017 年度 実施状況報告書

トゲウオ科魚類イトヨにおける季節性繁殖の平行的な喪失とその分子遺伝基盤

研究課題

研究課題/領域番号 16K07469
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

石川 麻乃  国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 助教 (20722101)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードTSHb2 / 日長応答性
研究実績の概要

(1)下垂体培養系を用いたTSHb2の作用機序の解析|これまでの研究から、TSHb2ノックアウトイトヨでは性腺刺激ホルモンをコードするLHやFSHの発現が高くなり、繁殖形質の発達が誘導されることが分かってきた。そこで、TSHb2がLH、FSHをどのように制御するのかを解析するために、下垂体を培養し、培養液に合成したTSHb2を投与して、LHやFSHの発現量が変動するかどうか検証した。TSHb2の投与により、LHやFSHの発現が抑制される傾向は見られたが、有意ではなかった。このため、TSHb2が直接LHやFSHを制御するとは結論づけられなかった。(2)日本集団を用いた短日条件でのTSHb2発現レベルに対する全ゲノムeQTL解析|日本集団の淡水型でTSHb2の日長応答性に寄与する候補ゲノム領域をより絞り込むために、よりサンプル数を増やし、短日条件下のTSHb2のeQTL解析を再度行った。日本の海型と淡水型のF2交雑個体を用意し、下垂体RNAのTSHb2発現量をqRT-PCRにより解析した。また、対応するヒレからDNAを抽出し、ddRAD法により遺伝型を決定し、R/QTLを用いてeQTL解析を行った。この結果、性染色体である19番染色体に、短日条件でのTSHb2発現量の違いを決定する遺伝子座が存在することが分かった。(3)近縁種ニホンイトヨでのTSHb2の日長応答性の解析|TSHb2の日長応答性の進化過程を明らかにするために、イトヨの近縁種であるニホンイトヨを用いてTSHb2とその他の繁殖形質の日長応答性の解析を行った。その結果、ニホンイトヨでもTSHb2は短日条件で高く、長日条件で発現が下がることが分かった。しかし、下がる反応速度は異なり、種間で反応性に違いが見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

日本集団を用いた短日条件でのTSHb2発現レベルに対する全ゲノムeQTL解析が順調に進み、それに寄与する遺伝子座が発見された。これにより、TSHb2の日長応答性の収斂進化の分子基盤に迫ることができている。また、TSHb2によるLHやFSHの直接的な制御は示されなかったが、この実験により、下垂体培養系を確立することができたため、今後はTSHb2ノックアウト個体の下垂体を培養し、これまでイトヨで示されている短日/長日条件下でのLH、FSHとアンドロジェンのフィードバック機構に対して、TSHb2がどのような機能を果たしているのか調べることができるようになった。このため、

今後の研究の推進方策

今後は、TSHb2ノックアウト個体の下垂体を培養し、短日/長日条件下でのLH、FSHとアンドロジェンのフィードバック機構に対するTSHb2の機能を検証する。さらに、TSHb2の上流候補cis配列について、トランスジェニックとゼブラフィッシュ培養株ZF4を持ちいたレポーターアッセイを行い、原因変異を特定し、その機能解析を行う。また、日長変動後の下垂体で早期に発現変動する遺伝子の中で、TSHb2と同じ細胞に今日発現している遺伝子を一細胞RNAseqでスクリーニングし、これらを海型、淡水型のTSHb2上流cis配列と共にZF4に共導入することで、TSHb2の上流cis配列に結合する候補転写因子の同定を行う。得られた候補原因変異について、、CRISPR/Cas9システムを用いたノックインを行い、機能解析を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Phylogenomics reveals habitat-associated body shape divergence in Oryzias woworae species group (Teleostei: Adrianichthyidae)2018

    • 著者名/発表者名
      Mokodongan Daniel F.、Montenegro Javier、Mochida Koji、Fujimoto Shingo、Ishikawa Asano、Kakioka Ryo、Yong Lengxob、Mulis、Hadiaty Renny K.、Mandagi Ixchel F.、Masengi Kawilarang W.A.、Wachi Nakatada、Hashiguchi Yasuyuki、Kitano Jun、Yamahira Kazunori
    • 雑誌名

      Molecular Phylogenetics and Evolution

      巻: 118 ページ: 194~203

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.ympev.2017.10.005

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Sex differences in recombination in sticklebacks.2018

    • 著者名/発表者名
      Sardell JM, Cheng C, Dagilis AJ, Ishikawa A, Kitano J, Peichel CL, and Kirkpatrick M.
    • 雑誌名

      G3: Genes, Genomes, Genetics.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Different contributions of local- and distant-regulatory changes to transcriptome divergence between stickleback ecotypes2017

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa Asano、Kusakabe Makoto、Yoshida Kohta、Ravinet Mark、Makino Takashi、Toyoda Atsushi、Fujiyama Asao、Kitano Jun
    • 雑誌名

      Evolution

      巻: 71 ページ: 565~581

    • DOI

      10.1111/evo.13175

    • 査読あり
  • [学会発表] Molecular and genetic basis underlying freshwater colonization and adaptation in sticklebacks2018

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa A, and Kitano J
    • 学会等名
      The 1st AsiaEvo conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Genetic mechanisms underlying variation in seasonal reproduction in sticklebacks.2017

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa A, and Kitano J
    • 学会等名
      Congress of the European Society of Evolutionary Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] DHA合成能が担うトゲウオの淡水進出とその遺伝基盤2017

    • 著者名/発表者名
      石川 麻乃
    • 学会等名
      道東森里海連関シンポジウム2017
    • 招待講演
  • [学会発表] A key role for an omega-3 fatty acid desaturase gene in stickleback freshwater colonization2017

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa A
    • 学会等名
      第33回個体群生態学会
    • 国際学会
  • [学会発表] DHA合成能が担う新規環境への適応放散の遺伝基盤2017

    • 著者名/発表者名
      石川 麻乃、北野潤
    • 学会等名
      第88回日本動物学会大会

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公開日: 2018-12-17  

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