研究課題
(1)下垂体培養系を用いたTSHb2の作用機序の解析|これまでの研究から、TSHb2ノックアウトイトヨでは性腺刺激ホルモンをコードするLHやFSHの発現が高くなり、繁殖形質の発達が誘導されることが分かってきた。そこで、TSHb2がLH、FSHをどのように制御するのかを解析するために、下垂体を培養し、培養液に合成したTSHb2を投与して、LHやFSHの発現量が変動するかどうか検証した。TSHb2の投与により、LHやFSHの発現が抑制される傾向は見られたが、有意ではなかった。このため、TSHb2が直接LHやFSHを制御するとは結論づけられなかった。(2)日本集団を用いた短日条件でのTSHb2発現レベルに対する全ゲノムeQTL解析|日本集団の淡水型でTSHb2の日長応答性に寄与する候補ゲノム領域をより絞り込むために、よりサンプル数を増やし、短日条件下のTSHb2のeQTL解析を再度行った。日本の海型と淡水型のF2交雑個体を用意し、下垂体RNAのTSHb2発現量をqRT-PCRにより解析した。また、対応するヒレからDNAを抽出し、ddRAD法により遺伝型を決定し、R/QTLを用いてeQTL解析を行った。この結果、性染色体である19番染色体に、短日条件でのTSHb2発現量の違いを決定する遺伝子座が存在することが分かった。(3)近縁種ニホンイトヨでのTSHb2の日長応答性の解析|TSHb2の日長応答性の進化過程を明らかにするために、イトヨの近縁種であるニホンイトヨを用いてTSHb2とその他の繁殖形質の日長応答性の解析を行った。その結果、ニホンイトヨでもTSHb2は短日条件で高く、長日条件で発現が下がることが分かった。しかし、下がる反応速度は異なり、種間で反応性に違いが見られた。
2: おおむね順調に進展している
日本集団を用いた短日条件でのTSHb2発現レベルに対する全ゲノムeQTL解析が順調に進み、それに寄与する遺伝子座が発見された。これにより、TSHb2の日長応答性の収斂進化の分子基盤に迫ることができている。また、TSHb2によるLHやFSHの直接的な制御は示されなかったが、この実験により、下垂体培養系を確立することができたため、今後はTSHb2ノックアウト個体の下垂体を培養し、これまでイトヨで示されている短日/長日条件下でのLH、FSHとアンドロジェンのフィードバック機構に対して、TSHb2がどのような機能を果たしているのか調べることができるようになった。このため、
今後は、TSHb2ノックアウト個体の下垂体を培養し、短日/長日条件下でのLH、FSHとアンドロジェンのフィードバック機構に対するTSHb2の機能を検証する。さらに、TSHb2の上流候補cis配列について、トランスジェニックとゼブラフィッシュ培養株ZF4を持ちいたレポーターアッセイを行い、原因変異を特定し、その機能解析を行う。また、日長変動後の下垂体で早期に発現変動する遺伝子の中で、TSHb2と同じ細胞に今日発現している遺伝子を一細胞RNAseqでスクリーニングし、これらを海型、淡水型のTSHb2上流cis配列と共にZF4に共導入することで、TSHb2の上流cis配列に結合する候補転写因子の同定を行う。得られた候補原因変異について、、CRISPR/Cas9システムを用いたノックインを行い、機能解析を行う。
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Molecular Phylogenetics and Evolution
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