研究課題/領域番号 |
16K07471
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研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
蘇 智慧 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 主任研究員 (40396221)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 節足動物 / 分子系統 / 進化 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
節足動物の進化と多様化のメカニズムを探る上で、系統関係はもっと重要な情報である。本研究の目的は、節足動物門の4亜門(鋏角亜門、多足亜門、甲殻亜門と六脚亜門)の代表的な種からゲノム規模の核タンパク遺伝子の配列を決定し、データベースに公開されている配列データも加え、数百のオーソログ遺伝子のアミノ酸配列を用いて系統解析を行い、節足動物全体を網羅した高次分類群(綱と主要な目)間の系統関係を明らかにすることである。そのうえ、分岐年代を推定し、系統関係の結果と合わせて節足動物の系統進化と陸上進出のプロセスを考察する。 初年度(平成28年度)では、多足亜門のサンプルを中心にトランスクリプトーム配列の決定と系統解析を行った。データベースに公開された配列データも加えて多足亜門の大部分の目を含めた系統解析を行うことができた。その結果、多足亜門の4綱の関係については、コムカデ綱とエダヒゲムシ綱、ヤスデ綱とムカデ綱がそれぞれ姉妹群であることが示唆された。多足亜門の目レベルの系統関係については、概ね形態に基づく分類学的知見と一致した。次年度(平成29年度)では、主として鋏角亜門と甲殻亜門の試料からトランスクリプトーム配列の決定を行った。鋏角亜門では、ウミグモ綱とカブトガニ綱から1種ずつ、甲殻亜門では、鰓脚綱の無甲目、背甲目、双殻目から1種ずつ、顎脚綱のカラヌス目、キクロプス目、無柄目から1種ずつ、軟甲綱の根鰓亜目(十脚目)、エビ亜目(十脚目) 、コノハエビ目、シャコ目から1種ずつ、計12種のトランスクリプトーム配列を決定した。それぞれの試料から約1500-3600万リードの配列データが得られ、コンティグ数は種によって異なるが、およそ9-40万得られた。今後、系統解析を中心としたデータ解析を行い、節足動物全体を網羅した系統関係を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の解析によって、節足動物門の4亜門のうち、多足亜門について必要な配列データがすべて得られた。他の3亜門の一部のサンプルと外群の配列データも加えて系統解析を行った。その結果、予定していた遺伝子数とアミノ酸座数のアライメントデータセットを構築することができた。そのデータセットを用いた系統解析から、信頼性の高い系統樹を得ることができ、多足亜門の綱レベルと目レベルの系統関係が明らかになった。次年度では、鋏角亜門と甲殻亜門から代表的な種(計12種)のサンプルが入手でき、それらのトランスクリプトーム配列データを得ることができた。六脚亜門については、代表的な種のトランスクリプトーム配列データはほとんど公開されているデータベースから入手することができたため、節足動物門の4亜門の配列データはほぼ揃った。今後、外群の配列データを加えて、節足動物門の系統解析を行い、その進化を考察したい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究遂行により、節足動物門の高次分類群間の系統解析に必要な種のトランスクリプトーム配列データはほぼ揃った。これらのデータを用いた多足亜門の系統解析の結果から、信頼性の高い系統樹の構築が可能であることが示唆された。今後は、外群の配列データも加え、これらの配列データをさらに精査し、系統解析に適切な配列データを取り出し、系統解析を行う。解析過程の状況に応じて、サンプルの配列データの追加も行う。最終的に節足動物門全体を網羅した高次分類群間の系統関係を明らかにする予定である。そのうえ、得られた系統関係に基づき、節足動物の形態や機能の進化を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:解析を予定している甲殻類と外群のサンプルのうち、数種のサンプル入手が遅れたため、トランスクリプトーム配列データの決定試薬などの使用の遅れが生じた。 使用計画:これまでの結果を踏まえ、最終年度分として請求した助成金と合わせて、解析を予定している全ての研究材料の入手と解析費用、それに系統解析の費用、研究打ち合わせと学会参加の旅費、成果公表費用に使用する予定である。
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