研究実績の概要 |
従来から進めてきた福島県の双葉層群(後期白亜紀:8900万年前)やモンゴルのゴビ砂漠の地層(前期白亜紀:約1億年前)からの研究によって,3次元的構造が良好に保存されている被子植物初期進化群の花化石や果実化石を発見し,さらに古植物学研究の新たな業績を積み上げてきた。 双葉層群の上北迫植物化石群から発見した花化石を大型シンクロトロンによるマイクロCTのトモグラフィー解析を行い、花の構造から、白亜紀の新属新種のヤマグルマ科植物の花化石であることを明らかにした。この花化石に、Archaestella(太古の花)という新学名をつけて発表した。また、モンゴルのテブシンゴビの地層(前期白亜紀:1億年前)から、アメリカ、中国、モンゴルの研究者らと共同で、シダ類やイチョウ類、球果類の新属新種の化石を発表した。 これまでの多くの白亜紀の花化石に関する研究成果をとりまとめ、「花のルーツを探る:植物化石の話」という書籍を出版した。被子植物の「花化石」は,白亜紀に急激に炭化し, 火山や褶曲などの高温や高圧の影響も受けていないと言う特殊な堆積条件の特殊な地層に保存されている。この本の中で、これらの研究成果に基づいて、被子植物の初期の花の特徴とその後の花の進化傾向について解説した。この分野の今後の研究の発展のために、役立つことを期待している。 また新たに、久慈層群の研究を進展させた。久慈層群の夏井川上流の玉川層と沢山層の地質を調査し,これらの中に多くの炭化物を含む層序があることを確認した。これまでに,サンプリングした堆積岩からミクロな選別フルイによる, 炭化小片を取り出し,さらに,実体顕微鏡下で被子植物の保存性の良い小型化石を探索してきた。この中から、新たに、被子植物の花化石などの炭化化石を発見している。今後、これらの炭化化石の内部構造を解明していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに双葉層群やモンゴルのテブシンゴビの採取してきた炭化化石のSortingにかなりの時間がかかっているが,おおむね,順調に推移している。これらの成果は,随時,アメリカのPeter Craneらとの共同研究としてPNAS誌などに論文発表を重ねている。29年度の発表論文は,国際誌に5編となっている。 シカゴの大型シンクロトロン(APS)が,高機能性を上昇させており,高精度でのマイクロCT撮影ができるようになってきたことも要因の一つである。そんな中で,双葉層群から,2種類の小型化石(花化石)の論文をまとめつつある。これらの化石の一つは,花化石の特徴から,ヤマグルマ科の新属であることを明らかにした。もう一つは、ツゲ科の花化石であることを解明し、論文としてまとめて発表した。 久慈層群の層序の中から、炭化した植物化石が含まれている可能性のある大量の堆積岩をすでにサンプリグしており、この堆積岩サンプルのクリーニングとソーテングが順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
久慈層群は、白亜紀に氾濫原であった地域で,炭化した「花」「果実」「種子」がシルト層の中に保存され,その後,高温や高圧の影響を受けていないと言う特殊な堆積環境が維持されてきた地層である。久慈層群の異なる層順から,被子植物の「花粉」「果実」「種子」「花」「材」等の保存性の良い植物化石を豊富に含んでいることが明らかになっている。特にに有望な久慈層群の夏井川上流の地層である。 これまでに,久慈層から発見している小型化石について,大型シンクロトロンによるマイクロCTトモグラフィーデータを集積し、分類学的位置や従来の古植物学的研究と比較しながら,引き続き,解析を進めていく。
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