研究実績の概要 |
本研究では、白亜紀の地層から発見された「花」 「果実」「種子」などの小型化石の内部構造を大型シンクロトロンのX線マイクロCT法により解明し, 被子植物の初期進化過程を解明していくことを目的としている。 最終年度では、これまでの双葉層やモンゴルの白亜紀層に加えて、新たに国内で白亜紀の小型炭化化石を発見できる地層の探索に努めた。3次元構造を立体的に残されている状態の小型植物化石は、約1億年にわたって、白亜紀に地層が堆積して以来、非圧縮、非高温、非褶曲という特殊な条件下で堆積してきた泥炭層からのみ発見されるものであり、これらの条件が整っている地層は世界的にも非常に限られた地点だけである。今回、発見を試みたのは、従来の双葉層群の北に位置する久慈層である。 久慈層群は, 久慈市から九戸郡野田村にかけて分布する堆積物で, 下位から玉川層, 国丹層および沢山層により構成されている。玉川層は、扇状地・ラグーンや河川起源の泥炭層が含まれており、植物の小型化石(Mesofossils)が含まれている可能性が高いと判断される。 今年度には、玉川層の中の泥岩層から、ブロックサンプリングを行い、150ミクロンのフルイ洗浄を行った。泥炭層から取り出した炭化植物化石をクリーニングおよび自然乾燥を行った後に、数か月かけて、実体顕微鏡下で、数ミリの炭化化石の探索を行った。 その結果、玉川層の層準から、シダ植物の羽軸、裸子植物の多くの球果類に加えて、被子植物の果実や種子の小型化石(Mesofossils)を発見した。この事から、久慈層群の玉川層から、将来的に花化石が発見できることを示唆した。これらの研究結果は、学術誌であるPaleontological Reseachに掲載可とされ、現在、印刷中である。
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