研究課題/領域番号 |
16K07480
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
都丸 雅敏 京都工芸繊維大学, 昆虫先端研究推進センターショウジョウバエ遺伝資源研究部門, 助教 (70324720)
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研究分担者 |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 昆虫先端研究推進センター生物資源フィールド科学研究部門, 教授 (40414875)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セーシェルショウジョウバエ / キイロショウジョウバエ / 性的隔離 / 配偶者選択 / 体表炭化水素 / 欠失染色体 / ガスクロマトグラフィ / 識別遺伝子 |
研究実績の概要 |
性的隔離に重要な配偶者選択に関して、遺伝学的および動物行動学的、化学生態学的なアプローチによる研究を行い、識別を選好と区別し、その進化を明らかにすることを目的として研究を実施している。まず、本研究開始までに行ってきた、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)欠失染色体系統を用いたスクリーニングの結果を精査し、セーシェルショウジョウバエ(D. sechellia)雌がD. melanogaster雄を識別する因子を含む欠失領域候補を7ヶ所と同定した。次に以下の項目について研究を行った。 雌の識別行動の詳細な解析:D. melanogaster雄を拒絶するヘミ接合F1雑種雌とD. melanogaster雄の求愛をビデオ撮影し、行動時間データを得た。1階マルコフ連鎖に基づき行動の遷移を解析し、エソグラムを作成した。その結果、ヘミ接合雌が拒絶に至る場合と、野生型雌が拒絶する場合の差異が見い出せなかった。1階マルコフ連鎖に基づく解析は、拒絶行動の差異を検出するには不適切な可能性が考えられた。 体表炭化水素の解析:D. melanogaster雄を拒絶する欠失領域がヘミ接合のF1雑種雌の体表炭化水素を解析したところ、明確な差異は見い出されなかった。また、F1雑種雌に対するD. sechellia雄の求愛を観察したところ、雄による識別が非常に弱かったため、識別が更に弱いことを指標にした解析は不適切と判断した。 識別遺伝子候補のカタログ化:D. melanogaster姉妹種の3種において、7ヶ所の欠失領域の塩基配列を取得した。1つの領域では、D. sechelliaに多数の大きな挿入があり、別な連続した2つの領域では多数の小さな挿入があった。残りの4つの領域では挿入や欠失はあったが大きなものではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に基づき、雌の識別行動の詳細な解析、体表炭化水素の解析、識別遺伝子候補のカタログ化を行った。得られた結果は必ずしも当初計画から期待されたものばかりではなかったが、基本的には当初計画を実施し、研究の推進に関する判断に必要な結果を得ることができた。そこで、初年度の進捗とはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得た結果から、体表炭化水素の解析については、計画を修正し研究を進める必要があることがわかった。そこで、体表炭化水素を解析する個体については、候補領域7ヶ所とのヘミ接合F1雑種雌のほかは、ゲノム解析から推定されている体表炭化水素生合成に関わる遺伝子がヘミ接合となるF1雑種雌のみに着目することとする。 そのほかの研究計画は、初年度に得た結果をそのまま発展させるものではない。そこで、当初計画に従い、雌の識別行動の詳細な解析、識別遺伝子候補のカタログ化、識別遺伝子の効果検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったGC分析用消耗品の納期が間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
GC分析用消耗品を購入する。
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