研究課題/領域番号 |
16K07483
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
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研究分担者 |
広瀬 慎美子 お茶の水女子大学, 湾岸生物教育研究センター, 特任講師 (10398307)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ホヤ / 分子系統 / 光共生 / 藍藻 / 進化 |
研究実績の概要 |
脊索動物の中で生涯にわたる藻類との絶対共生(共生が宿主または共生体の生存に不可欠な共生関係)が知られているのはサンゴ礁域に分布する一部の群体ホヤだけである。このユニークな共生はジデムニ(ウスボヤ)科の4属にまたがって知られることから、少なくとも属ごとに独立に藍藻との共生成立が生じたと考えられているが、ジデムニ科は300種以上からなる大きな分類群で科内の系統関係は十分にわかっていない。一方で、共生藍藻を次世代に継承する垂直伝播機構は、主にホヤ群体内の藍藻分布様式に依存しており、異なる属でも同様の垂直伝播機構が見られる。本研究ではミトコンドリア遺伝子に基づく分子系統解析をもとに、宿主ホヤの系統関係を明らかにし、ホヤと藍藻の共生システムの進化・多様化プロセスの解明を目指す。 琉球~台湾を中心とした地域の藍藻共生性ホヤについて、ミトコンドリアCOI遺伝子の部分配列(Yokobori領域およびFolmer領域)の決定を進めており、各種について2産地以上の試料について配列を得ることを目指している。 平成28年度は、これまでに収集した保存試料に加え、新たに沖縄島備瀬崎および大度海岸で採集した藍藻共生ホヤの試料をもとにCOI遺伝子の部分配列決定を進めた。Geller et al. (2013)などの改変primerなどを参照して、primerの見直しを行い、これまで配列情報が得られていなかった5属17種47群体についてFolmer領域の塩基配列の決定に成功した。既存のデータを含め、我々はこれまでに5属25種についてYokobori領域の、5属18種についてFolmer領域の塩基配列が決定できている。このうち藍藻と共生する種は、Yokobori領域について4 属19種、Folmer領域について4属16種となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はこれまでに収集した試料および新たに沖縄島で採集できる種を対象とする計画であり、試料収集はほぼ予定通りに進められた。また、primerの設計を見直し、新たに17種についてFolmer領域の塩基配列が得られるなど、塩基配列決定も順調に進んでいる。現時点ではLissoclimum miduiやTrididemnum mniatumなどの配列決定に成功しておらず、新たな試料収集とprimer設計の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29-30年度は沖縄島以外でも採集を行い、琉球~台湾で得られるすべての藍藻共生性ホヤ各種で2産地以上の試料についてYokobori領域およびFolmer領域の配列を取得して、系統解析を行うことを目指す。これまでの研究から、長期保存された試料よりも、新鮮な試料の方が配列決定の成功率が高いため、特にこれまで塩基配列が得られていない種にフォーカスした採集を計画してゆく。 台湾での採集については、中央研究院の野澤博士に協力していただき、平成29年の5月に緑島で実施する予定である。また、日程の調整により、秋頃に台湾東海岸で実施する可能性も検討している。 研究分担者がお茶の水女子大学から東海大学海洋学部に異動したが研究の実施には問題は無い。設備状況が少し変わることから、実験機器の整備は若干必要となる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は日本動物学会大会の主催業務があり、予定した頻度で採集調査ができなかった。また、使用予定であった既存機器に故障があり、修理あるいは代替品購入の必要がある場合に備えて予算を確保した。 研究分担者が平成29年度から異なる研究機関に移動することとなり、既存の試料の解析を優先的に進めた。異動後も本研究課題を分担する上で支障は無いが、前所属とは機器等の整備状況が異なることが予想された。このため、分担の実験を実施する上で必要な研究環境を整え、試料の移送するために予算を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的には当初予定に従って研究費を使用する。前年度から繰り越す予算について、研究代表者は使用予定であった故障機器の対応を検討する。研究分担者については、前年度から確保した予算で速やかに試料を移送し、研究環境を整えることとする。 これまでに得られたデータをもとに、平成29年度中に学会発表を計画している。
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