研究実績の概要 |
当該研究機関において,以下の様な研究活動を行った. 1.日本国内のおけるジャゴケConocephalum conicum(苔類,ジャゴケ科)の分布と分化:国内にはこれまで3種の隠蔽種(C. conicum typeJ,C. conicum type F,C. salebrosum)が分布することが知られていたが,新たにC. conicum typeRの存在を確認した.これはtrans-Metyle-cinnamonateを揮発成分として多量に含み,そのため強いマツタケ臭をもっていることが大きな特徴である.これら4種について,国内での分布,形態の違いを精査するとともに,遺伝的マーカ(rbcL, psbA-trnH)を用いて,変異性と地域性についてデータを収集している. 2.ヤクシマコモチイトゴケ属Yakushimabryum(コモチイトゴケ科)およびその近縁属について,形態および葉緑体DNA塩基配列情報(rbcL, rps4, trnL-H)を用い,系統関係を解明するとともに,コモチイトゴケ科とナガハシゴケ科の関係を明らかにした.その結果,コモチイトゴケ科とナガハシゴケ科は3つのクレードから成り立つこと,つまり狭義コモチイトゴケ科,狭義ナガハシゴケ科+モリクサゴケ亜科Heterophyllioideae,そしてミスジヤバネゴケ属の3つの系統群が認められる.これを反映して,新属Orientobryum属を記載した.この結果についてはすでに論文として出版されている.
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