観測定点とした琵琶湖において、多数の共生藻を保有する繊毛虫を解析してきた結果、多くの繊毛虫が特定の藻類種を共有することが判明した。本藻のrDNAは、各宿主種依存でわずかずつの相違がみられていたが、数年サンプリングを続けてもなお、宿主種―藻のrDNAパターンが変化しなかった。すなわち、共有イベントは過去の出来事であり、各種繊毛虫は半永久的に本藻を保持していると結論付けた。本藻の分子系統上の独立性に加え、rRNAにおける相補的塩基置換現象を根拠とし、新属新種Carolibrandtia ciliaticolaを提唱した。
細胞内共生のモデル生物であるミドリゾウリムシがもつ共生藻Chlorella variabilisの細胞壁を詳しく観察したところ、単独培養時と共生時において、細胞壁の厚さや化学組成が変化することが判明した。この現象は細胞内共生の可不可にもかかわるものと考えられ、今後非共生種との詳細な比較が課題となる。
近年登場して間もない、手のひらサイズの新型ロングリード次世代シーケンサーMinION (Oxford NANOPORE Technologies) を用いて、ミドリゾウリムシ共生藻 Chlorella variabilis のゲノム決定を行い、様々な藻類の中型サイズのゲノムを高品質・低コストで決定する手法を開発した。この研究で確立した中型ゲノムの決定手法は、様々な共生藻類のゲノムを比較研究する必要がある、多様な光合成生物をうみだす進化の原動力となる細胞内二次共生による葉緑体獲得のメカニズムを明らかにすることに貢献するものと期待される。
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