研究課題/領域番号 |
16K07492
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
前田 健 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (20572829)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハゼ / 沖縄 / フィリピン / ベトナム / 分類 / 集団構造 / 回遊 / 仔魚 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、琉球列島の沖縄島と徳之島、ベトナムの中部ダナン市と北部クアンニン省の河川で魚類のサンプリングを行い、重要な標本を多数得た。本年度および過去に採集した標本からDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて840個体のミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定した。沖縄島、フィリピンのパラワン島、ベトナムの河川で採集したハゼ類が中心である。地域間で遺伝的に異なる個体群に分かれる種と単一の個体群を形成する種があり、さらにサンプルを追加して解析を進める予定である。また系統や分類に関する重要な発見も多数得られた。 前年度までに採集した標本と合わせ、必要な形態の計測を行い、ハゼ類の分類の研究を進めている。本年度は、エソハゼ属の分類に関して論文を1報公表した。またミナミアシシロハゼの新たに見つかった分布地についても論文として報告した。 10月にフランス領ポリネシアで行われた国際学会で、トラフボウズハゼとゴクラクハゼの個体群構造とそれに関わる生活史の要素を比較して発表した。また、その際タヒチ島とモーレア島の河川で魚類の観察を行った。構成要素の多くをボウズハゼ類とユゴイ類が占め、典型的な海洋島の魚類相であることを確認した。 ベトナムのハゼ類とアユ、フィリピンと琉球列島のハゼ類の耳石の微量元素分析を進めている。それぞれ予備データが得られており、今後、データを増やして公表する予定である。本年度はベトナムにおけるアユの回遊について、ベトナム人研究者との共同研究の成果を公表した。 ハゼ類の仔魚の飼育を行うために飼育設備を準備し、また餌となるワムシとアルテミアの培養を行い、試験的に海産魚ヒバシヨウジの飼育を行った。孵化から約5ヵ月間飼育し、成魚とほぼ同様の形態に成長するまでの飼育を成功させた。この経験に基づき、次年度に回遊性ハゼ類の飼育を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に所属機関において潜水作業中の事故があり、学内全てのフィールド調査が中止となった。本年度中にフィールドワークの実施に関する学内の認可体制が整い、再開可能となったが、本年度予定していたフィリピンのパラワン島におけるサンプリングには行くことができなかった。また、フィリピンのルソン島におけるサンプリングを計画しているが、フィリピン政府への許可申請手続きが進んでおらず(現地大学の人事異動のため)、このサンプリング計画も進んでいない。 しかし、琉球列島やベトナムでは十分な標本が得られ、ミトコンドリアDNAの解析や分類の研究、耳石の解析も順調に進んでいる。 仔魚の飼育については、設備を整え、予備的に海産魚の飼育を行ったが、対象とするハゼ類の卵塊をタイミングよく採集することができなかったため、次年度に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、5~6月にフィリピンのパラワン島においてサンプリングを行い、フィリピン産の標本の充実を図る。ルソン島のサンプリングは許可申請が進めば行いたいが、難しい場合は琉球列島、パラワン島、ベトナムの3ヵ所を中心とし、それらの間のコネクティビティとして研究成果を取りまとめる。また可能であれば日本本土でサンプリングを行いたいと考えている。 琉球列島の河川でハゼ類の卵塊を採集し、孵化した仔魚の飼育を行い、浮遊期の発育過程についてデータを得る予定である。また、それに先立って餌生物の培養を行う。 耳石の微量元素に基づく回遊履歴の研究については、必要な標本は概ね得られているので、連携研究者の飯田碧博士と一緒に解析を進める。耳石輪紋数を用いた浮遊期の長さに関する研究も、データを一部追加し、平成30年度中に論文として取りまとめたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプリング計画に変更があり、一部次年度に行うことになった。
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