研究課題/領域番号 |
16K07496
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
北山 太樹 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (20270407)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小笠原 / 海藻相 / 植物地理学 / 藻類 |
研究実績の概要 |
小笠原諸島は日本列島から約1,000km南方に離れ、親潮・黒潮・対馬海流の影響を受けないために、日本列島とは大きく異なる海藻相が成立していることが予想される。本研究は、この海域の特性を解明することを目的に小笠原各島の海藻相を採集調査するもので、本年度は第1回目の現地調査として、平成28年7月に父島沿岸の潮間帯でスノーケリングによる採集調査を行った。また、比較のために東京都島しょ農林水産総合センター・小笠原水産センターの協力で、同センターが保有する調査船「興洋」によるドレッジ調査も父島・弟島沖で平行して行った。 調査の結果、父島の低潮線より2mまでの浅海域で、ハイミルモドキ、カヅノアミジ、シワヤハズ、コナウミウチワ、ソデガラミなど日本列島にも分布する海藻種が採集された。一方、ドレッジ調査では、アオサ科、ミル科、ケヤリモ科、フジマツモ科などの同定困難種が少なくとも4種得られた。多くは日本新産種と考えられる。とりわけ、ケヤリモ目に属すると思われる褐藻は、その解剖学的形態とシリカゲル乾燥処理を施したサンプルのDNA解析により日本新産属となるLucasia属の未記載種と考えられた。和名「ウミタンポポ」としてもっか新種記載を準備中である。これまでに得られた試料からは浅所と深所とで海藻相の構成種の由来が大きく異なることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、初年度に3回の現地調査を予定していたが、年度に入ってから3つの企画展示「田中芳男展」、「シーボルト展」、「大英自然史博物館展」が入り、その準備のためにやむをえず2回目以降の調査を断念した。また、移動手段や許可の問題で予想以上に父島以外の島へのアプローチが難しいことが分かり、計画通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる平成29年度は、企画展への参画を減らして現地調査の回数を増やすとともに、現地漁業者に協力を依頼し、弟島や兄島での採集を敢行する。小笠原に分布する大半の海藻種を網羅できるものと予想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度に入ってから館内業務である企画展が3件入ったために計画通りの現地調査が行えず、また、父島以外の島にわたることが予想以上に難しかったため、旅費や現地傭船代を予定通りに使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
関係する企画展が少ない次年度(平成29年度)に集中的に現地調査を行うことにより、予定通りの成果をあげたいと考える。
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備考 |
『朝日新聞』平成29年2月26日朝刊社会面に本研究についての報道記事「海底にタンポポ? 小笠原、新種か?」あり。
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