研究課題
唯一のエネルギー源としてメタンを供給する連続培養装置を用い、沖縄トラフ深海熱水活動域(水深約1,000 m)試料を接種源として、複数の温度条件下で好気性メタン酸化細菌の集積培養を行った。数ヶ月経過後に培養装置内部に厚く形成された多種混合微生物マットの群集構造を調べるため、次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子アンプリコンのシーケンス解析を行ったところ、非常に多様性の高い微生物マットであることが示唆された。微生物マットの中には、属レベルで新奇且つ多様なGammaproteobacteria綱Methylococcales目細菌がマット全体の20%程度含まれていることが確認され、好気性メタン酸化細菌を一次生産者とする微生物群集の存在が示唆された。また微生物マットの顕微鏡観察から、メタン酸化細菌が非常に活発に分裂している様子も確認された。この微生物マットからメタン酸化細菌を単離するため、バッチ法による培養実験を試み、新奇培養株2株(IN45株およびIN20株)を単離するに至った。Methylothermaceae科Methylomarinovum属のIN45株は至適生育温度45-50℃、Methylococcaceae科のIN20株は至適生育温度25℃を示し、試験管によるバッチ培養法で良好に生育することから、今後様々な研究に利用可能であると考えている。現在までにこの2株のゲノム解析を終了している。今後データ解析を行い、そこから推察される代謝特性について実験的に確かめるとともに、記載のための分類学的解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りメタン酸化集積系の群集構造解析を行い、さらにそこから新奇培養株を得ることができたことから、研究は順調に進展していると判断した。
一つの集積培養系を異なる条件下に置いた際の微生物マット群集構造の変化を明らかにし、その応答から各メタン酸化細菌種の至適生育条件を推察し、それぞれの単離へ向けた生理学的情報を得ることを目指す。またバッチ培養法の改良を行い、単離行程の効率化を模索すると同時に、新たな培養株の取得を試みる。
本研究予算で購入を予定していた試薬・物品等を、他の研究費で購入できることになったため、次年度使用額が生じた。
当初の計画では予定していなかった高精度な解析を追加的に行うための経費とする。
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PLOS ONE
巻: 11 ページ: -
10.1371/journal.pone.0165635