研究実績の概要 |
これまでに沖縄トラフ熱水活動域試料より単離した、中温性(至適生育温度25℃)および中等度好熱性(同45℃)の2株の新規メタン酸化細菌(IN20株、IN45株)について全ゲノム配列を取得した。また近縁種とのゲノム比較から2株はそれぞれMethylomarinum属とMethylomarinovum属の新種と判断した。これら2株の分類学的データをすべて取得し、今後これらを正式に新種として記載するための準備を終えた。 また、これまでに沖縄トラフ熱水活動域試料より集積培養に成功しているMethyloprofundus sp. INp10について完全ゲノムを取得した。これを近縁種である日本近海に生息するシンカイヒバリガイ類のメタン酸化共生菌ゲノム配列と比較し、それぞれの特徴付けを行った。 INp10は低酸素に適応し、異化的硝酸還元(硝酸から一酸化窒素への還元)を行えることが示唆された。また顕微鏡観察から運動性とバイオフィルム形成能を有することが明らかであったが、ゲノム上には鞭毛、pilus system, chemotaxis, aerotaxis, type II & VI secretion systems, antibiotics biosynthesis等の遺伝子がコードされており、自然環境中での生存競争に有利なシステムを備えていることが分かった。一方のシンカイヒバリガイ類共生菌は、INp10と同様に異化的硝酸還元が行えることが分かったが、その他上記のシステムに関わる遺伝子の多くを欠いていた。以上のことから、自由生活型のINp10と宿主体内に棲む共生菌では、その生活様式がゲノムに反映されていることが強く示唆された。
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