研究課題/領域番号 |
16K07502
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研究機関 | 徳島県立博物館 |
研究代表者 |
山田 量崇 徳島県立博物館, 自然課, 主任 (20463474)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 交尾器形態 / 交尾行動 / ムクゲカメムシ |
研究実績の概要 |
動物の複雑な交尾器形態の機能的意味を理解し、その進化史に迫った研究は充分に行われていない。本研究はこれまでほとんど注目されてこなかったカメムシ亜目昆虫の交尾器形態を機能的側面から検証し、強固な系統仮説に基づいて交尾器の進化史を探ろうとするものである。 2年目となる本年度も、引き続き野外調査と観察技術の確立に重点を置いた。野外調査では、国内各地(奄美大島、石垣島、徳島など)およびタイにて交尾実験ならびにDNA分析のためのサンプルを収集した。その結果、形態観察および系統解析に必要なムクゲカメムシ科7種(すべて未記載種)とオオムクゲカメムシ科5種(少なくとも未記載種2種を含む)の標本を得ることができた。ノミカメムシ科については残念ながら観察や解析等に必要な標本を得ることができなかった。多数個体採集された種については、新鮮な個体を長期にわたって入手できるよう飼育系の確立を試みた。とくにカワラムクゲカメムシ属の一種(未記載種)が人工飼料で飼育可能であることが確認された。交尾行動の観察については初年度のノミカメムシ科に続き、他の2科(ムクゲカメムシ科とオオムクゲカメムシ科)においても確認することができた。ムクゲカメムシ科では実験下においておそらく世界で初めて交尾行動が観察され、オオムクゲカメムシ科では雄上位の交尾姿勢という既往研究とは異なる行動が観察された。10例の交尾行動を観察し、写真と動画で記録した。本年度は室内での交尾実験が成功し、飼育系も確立することができたものの、交尾ペアの固定があまり上手くいかなかった。 また、カメムシ亜目昆虫の交尾器形態を比較検討する足がかりとして、台湾と南西諸島のカスミカメムシ科ダルマカスミカメ亜科の分類学的再検討とミャンマー産琥珀化石の記載を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
形態および分子解析に必要なサンプルの収集については、おおむね計画通り進めることができた。また、本下目主要3科のうち未観察だった残りの2科において、室内実験によって交尾行動を観察することができた。しかし、交尾ペアの固定が上手くいかず、本年度に計画していた交尾状態の観察を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査ならびに交尾実験は引き続き計画通り進める。さいわい実験系と飼育系の確立には成功しているため、交尾状態のペアを多数確保し、形態観察に力を注ぐ。分子解析については、ある程度サンプルが蓄積されているので、研究協力者と協議しながら引き続きDNA抽出および塩基配列の決定を進めていく。それらと並行して、採集された標本については、形態形質に基づいて分類学的研究を行う。
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