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2016 年度 実施状況報告書

中・長期モニタリングデータの解析によるサンゴ群集の時空間動態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K07506
研究機関長崎大学

研究代表者

竹垣 草世香 (向草世香)  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 客員研究員 (30546106)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード個体群 / 長期データ / モニタリング
研究実績の概要

石西礁湖のサンゴ群集復元力を評価するために、1983年から2013年までの調査データを整備し、データベースを作成した。サンゴ被度の顕著な増加が見られた1991年以降に着目し、69地点においてサンゴの回復力の指標として大規模撹乱後の4年間のサンゴ被度変化量を計算した。1998年および2007年のサンゴ大規模白化後に被度が40%以上増加した地点数は、1990年までのオニヒトデ大発生後に比べると極めて少なかった。また、北側外縁部の地点はどの年代もサンゴ回復力が高かったのに対し、礁内部の地点は近年回復力が低かった。北側外縁部はミドリイシ科新規加入数が多い傾向があり、高いサンゴ回復力の要因の一つと考えられる。
亜熱帯から温帯のサンゴ群集時空間ダイナミクスを明らかにするために、2004年から2013年までの環境省モニタリングサイト1000事業の調査結果をまとめたデータベースを作成した。サンゴ被度の1年間の変化量を算出し、優占するサンゴ型や地形を分類した。サンゴ被度の経年変化は、石西礁湖・奄美群島では減少、沖縄島周辺離島では増加、他の調査海域では変動はあるものの顕著な傾向は見られなかった。一般に、サンゴ被度年変化量およびミドリイシ科加入数は琉球諸島で大きく、九州・本州で小さい傾向があった。しかし九州・本州の各地でもサンゴ被度が大きく減少した年があり、その前年にオニヒトデの発生や高い白化率が見られた。オニヒトデとサンゴ白化は、亜熱帯と温帯ともにサンゴ群集へ与える影響が大きいと考えらえる。サンゴ型は、琉球諸島ではミドリイシ優占群集が近年減少し、多種混成型に変わった一方で、九州・本州ではミドリイシ優占群集が経年的に多く見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで石西礁湖および周辺海域での環境省モニタリングサイト1000事業の調査データを集中的に解析し、サンゴ被度の年変化パターンの類別や撹乱要因との関係性の検討を行ってきた。得られた結果を学術論文にまとめたが、モニタリングサイト1000事業ではサンゴ被度や撹乱ダメージなど定量的なデータに関しても目視観測を行っているためデータの信頼性が疑問視され、国際学術雑誌での出版には至らなかった。引き続き改訂を重ねる必要がある。本研究課題では、石西礁湖だけでなく、沖縄島から九州・本州まで対象海域を広げてサンゴ群集時空間ダイナミクスを解析することを目的の一つとしているが、モニタリングサイト1000事業の調査データは国際学術雑誌での受け入れが厳しい可能性がある。そのため、申請書で検討したような精度の高い解析ではなく、おおまかな傾向を議論する方針が良いと判断し、まずは調査海域ごとのサンゴ群集の変動や撹乱要因との関係性を検討した。今後は、得られた結果を統計的にサポートする必要があると考えている。
石西礁湖のサンゴ群集復元力に関しては、撹乱後のサンゴ被度回復量を指標として対象地点の特徴を明らかにすることができた。各地点での撹乱の有無や強度のデータは整備できたが、有用な撹乱強度のスコア化はできなかった。今後は物理環境要因とも合わせて、各地点の撹乱や環境条件の指標化を検討する必要があると考えている。

今後の研究の推進方策

石西礁湖のサンゴ群集復元力に関しては、1991年以降調査が継続的に行なわれている69地点について、撹乱強度の指標値を検討する。また、物理的環境要因は、現地観測と海水流動モデルによる再現値などのデータ収集と整理を行い、有用な指標値を検討する。得られた結果をもとに、サンゴ被度の増加量との関係性を解析する。
亜熱帯から温帯のサンゴ群集の時空間ダイナミクスに関しては、サンゴ被度年変化について時系列クラスター解析を行い、変動傾向が類似する空間スケールを明らかにする。また、物理的環境条件についてデータを収集し、台風や大雨など調査が行われていない撹乱要因も考慮できるかどうかを検討する。
また、優占種の生活史特性を明らかにするために、データの整備を行う。石西礁湖のクシハダミドリイシ、長崎のエンタクミドリイシについて、マーキング個体の生存確認や投影面積の計測を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度はデスクトップパソコンを購入する予定にしていたが、研究実施場所のスペースの問題から購入できなかった。設備備品費として計上していた予算が未使用となったため、次年度繰越とした。

次年度使用額の使用計画

データ解析および調査時に携行も可能な高性能のノートパソコンを購入する。また、調査データを解析する研究補助者の雇用、ならびに野外調査器材の購入や英文校正に予算を充当する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] モニタリングサイト1000データに基づく石西礁湖および周辺海域のサンゴ被度変遷の解析2017

    • 著者名/発表者名
      向 草世香・中村隆志・灘岡和夫
    • 学会等名
      第64回日本生態学会大会
    • 発表場所
      東京都新宿区早稲田大学早稲田キャンパス
    • 年月日
      2017-03-16
  • [学会発表] オニヒトデ大発生のメカニズム解明および予測のための陸域ー海域ー生態系統合モデルシステム2016

    • 著者名/発表者名
      中村隆志・Laurence Patrick CB・天野慎也・渡邉敦・Ratio Sith・向草世香・福岡弘紀・鈴木豪・安田仁奈・長井敏・灘岡和夫
    • 学会等名
      日本サンゴ礁学会第19回大会
    • 発表場所
      沖縄県那覇市沖縄タイムスビル
    • 年月日
      2016-12-04
  • [学会発表] Distribution and gene flow analysis of sibling coral species, Acropora hyacinthus and Acropora spicifera in the north peripheral region2016

    • 著者名/発表者名
      中林朗・井口亮・北野裕子・上野光弘・長井敏・山北剛久・向草世香・山本由美・安田仁奈
    • 学会等名
      Joint meeting of the 22nd International Congress of Zoology (ICZ) & the 87the meeting of the ZSJ
    • 発表場所
      沖縄県国頭郡恩納村沖縄科学技術大学院大学
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-18
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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