研究課題/領域番号 |
16K07508
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
片野 俊也 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00509820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 珪藻 / Skeletonema属 / PCR / 種遷移 |
研究実績の概要 |
Skeletonema属群集の季節遷移について、東京湾奥部の定点にて定期調査を行った。また、6及び9月の採泥試料を用いて、発芽試験を行い種遷移に与える発芽影響について検討した。 海水試料から計6種 (S. ardens,S. costatum,S. japonicum,S. marinoi-dohrnii complex,S. menzelii,S. potamos) のSkeletonema属が検出された。全ての海水試料からS. marinoi-dohrnii complexが検出された。S. japonicum は3月から6月に、S. menzelii は6月から10月に、S. potamos は不定期に検出された。S. costatumは10月のみ、S. ardensは9月と10月に検出された。月ごとに出現種数を見ると、3から5月は、2-3種しか出現しなかった。6,8月も出現種は3種であったが、9月に4種、10月に5種と出現種が増えた。 底泥のSkeletonema属珪藻の種組成を調べたところ、6月にはS. costatum、S. japonicum、S. marinoi-dohrnii complex、S. menzelii、S. potamosの5種が、9月にはこれにS. ardensを加えた6種が検出され、水柱に出現した全種が泥からも検出された。6月9月とも塩分30の条件では、温度15度あるいは25度のどちらかで、S. ardens以外の全種の出現が認められた。調査地点において、海底からSkeletonema属が発芽できるかどうか検討したところ、本調査期間では、透明度が高かった8月にのみ発芽可能と推定された。8月に発芽可能であった5種の全ては10月に検出されており、8月に. costatum、S. japonicum、S. marinoi-dohrnii complex、S. menzelii、S. potamosの5種が発芽したことが、9,10月の出現種増大に寄与していたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
季節的な出現パターンについて、ほぼ一年分の情報が得られた。上記には記していないが、東京湾だけでなく有明海においても冬季における種遷移を明らかにすることが出来た。冬季有明海においては、S. marinoi-dohnrii complex からS. japonicumへの種の遷移が検出された。東京湾においても、冬季にはこの2種が検出されており、少なくともこの2つの内湾において、冬季には、S. marinoi-dohnrii complex とS. japonicumの2種が優占していることがわかってきた。一方、下記には、東京湾でより多くの種が出現した。6月から10月にかけて出現種数が3種から6種へ増えた。6から10月に新しく出現した種は、底泥からの発芽試験で発芽が認められた種であった。このように、水柱の出現種の季節変動パターンと底泥からの発芽に密接な関連があることが示唆された。これらについては、情報を蓄積して再現性等をこれからは見ていくが、このテーマについては極めて順調に推移している。 培養株については、これまでに50株以上の単離培養が出来た。部分的には遺伝子配列解析も進めた。ほぼ予定通りの進捗である。 手法開発については、リアルタイムPCRの検量線を全てのプライマーセットについて完成させた。またマルチプレックスPCRも完成した。一方FISHについては、クロロフィル自家蛍光による障害が著しくこの問題はまだ解決に至っていない。またリアルタイムPCRについては、検量線は作成出来たが、細胞数への変換がまだ確立出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
FISH法については、方針の変更を考えている。則ち、FISH法開発は、一旦休止し、PCR 法にて進める事を検討している。この方針変更は、リアルタイムPCRによる解析を行うことによって定量的な季節変動は調査可能なので、Skeleltonema属の種組成解析には大きな障害にはならない。その他については、大きな変更はなく、今後も、発芽試験と季節変動調査を東京湾において、進めて行く予定である。
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