研究実績の概要 |
今年度は、1)リアルタイムPCRにおいて、底泥中、水中試料の定量のための検量線の作成、2)底泥中のSkeletonema属珪藻の種毎の細胞密度の季節変動、3)水中でのSkeletonema属2種(S. marinoi-dohrnii complex, S. japonicum)の種間競争について、研究を進めた。 リアルタイムPCRについては、水、泥の両方について、検量線の作成を完了した。これを用いて、東京湾奥部の泥中のSkeletonema属の種毎の細胞密度について調べた。東京湾奥部では泥1gあたり8月17日には130万細胞が検出された。9月には約70万細胞、10―12月は約20万細胞で推移した。12月には培養(MPN法)による休眠期細胞の定量を行ったところ、泥1gあたり7万コロニーが発芽した。PCRによる定量は、培養法と比べて、およそ桁がずれるほどの過大/過小評価にはなっていないものと思われた。また、種組成については、8月はS. marinoi-dohrnii complexがSkeletonemaの93%を占めていたが、9月以降64%, 45%, 9%と減少し、代わりにS. japonicumが8月の5%から9月以降には、30%, 49%, 85%, 94%と割合を高めた。このように泥中のSkeletonemaの細胞密度および組成は大きく変化していることが明らかになった。 水中でのSkeletonema属の種遷移機構としては、同一環境条件であっても細胞サイズがサイズ回復するまでは小さいほど増殖速度が高まることを見いだした。細胞サイズの大小関係をいれかえたSkletoenema 属の2種を用いて培養実験を行い、種間競争の結果が細胞サイズによって変わることを示した。
|