研究実績の概要 |
東京湾奥部に定点を設け,水中および底泥のSkeletonema属珪藻の細胞密度および種組成について季節変動を調べた. 水中でのSkeletonema属珪藻の細胞密度は,0-93,000cells/mLの範囲で変動し,調査期間(2016年3月から2018年9月)を通じた平均値は10,000 cells/mLであった。細胞密度が,10,000 cells/mLを超えたのは,2016年3―5月,2016年10月,2017年8,9月,2018年6-9月であった。2017年までの試料について種組成を解析したところ,6種(S. marinoi-dohrnii complex, S. japonicum, S. menzelii, S. ardens, S. costatum s.s. S. potamos)を検出した。このうち,S. ardens, S. costatum s.s., S. potamosは,東京湾で初検出である。 泥中のSkeletonema属の細胞密度は,泥1gあたり最大で380万細胞に達し非常に多くの細胞が堆積していることが分かった。この間6回行った培養法(MPN法)で行った泥中のSkeletonema細胞密度の見積もりでは,最大で泥1gあたり35万細胞が検出された。MPN法に比べてqPCRによる定量では平均4.7倍高い値が得られ,従来は底泥中のSkeletonemaは,過小評価されてきたと考えられた。また,種組成については,これまでは培養した後にしか種を判定できなかったが,PCRにより培養せずに種組成を評価出来るようになり,その結果,Skeletonema marinoi-dohrnii complexが平均で53.2%を占めた。次いでS. japonicumが平均で41.9%を占めた。 サンプリングにより得られた泥を現場水温で培養し,経時的に減少過程を追跡したところ,30日の培養により平均で細胞密度が半減することが明らかになった。
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