研究課題/領域番号 |
16K07512
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西川 潮 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (00391136)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 外来種 / 攻撃行動 / 侵入歴 |
研究実績の概要 |
北米原産のシグナルザリガニ(ウチダザリガニ;Pacifastacus leniusculus)は、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでの研究から、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほどハサミ(鉗脚)が大型化していることが示されている。本研究では、室内実験を通じて、シグナルザリガニの侵入歴の違いに伴う攻撃性や活発さといった行動特性の変化を検証した。一般にザリガニ類のハサミの大きさは攻撃性と密接な関係があることから、「侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は攻撃性が高く、活発に採餌する」ことを仮説とした。実験には、北海道摩周湖(1930年導入)と長野県片桐ダム湖(2010年定着確認)のシグナルザリガニのオスを用いた。シグナルザリガニのハサミ(相対鉗脚面積)は、摩周湖集団と比べ片桐ダム湖集団で有意に大きかった。各集団の攻撃性を明らかにするため、同一集団のサイズがほぼ同じ2個体を水槽に入れ、5秒ごと10分間の攻撃行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に、各集団の活発さを明らかにするため、ザリガニ個体ごとに初めて見る餌(ジャガイモ)の消費量を測定した。実験1の結果から、摩周湖のシグナルザリガニ集団は、片桐ダム湖集団と比べ、攻撃性が高く接近数が多いことが明らかとなった。実験2の結果からは、両シグナルザリガニ集団間で活発さに明確な差は認められなかった。また、シグナルザリガニの攻撃性と活発さとの間には正の相関は認められなかった。以上より、侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は、古い集団と比べ攻撃性が高いことが示された。しかし攻撃性の高い個体は活発であるという仮説は支持されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は北海道摩周湖と長野県片桐ダム湖のシグナルザリガニ集団を対象に室内実験を行い、侵入年の異なる二集団間で攻撃行動の強さに差異が認められた。一方で、今後活発さの実験に用いる餌は再検討の余地がある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、実験に用いるシグナルザリガニの集団数を増やすとともに、室内実験を精緻化する。また、最終年度までには、侵入集団のパーソナリティー特性に影響すると考えられる各水域の餌資源量の推定や、外来ザリガニのパーソナリティーが当該集団の栄養ニッチまたは栄養段階に及ぼす影響を明らかにしたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
台風被害による増水で野外調査は危険性が高かったため、旅行日程を短縮した。
|
次年度使用額の使用計画 |
大学の事情により、29年度以降はこれまで借りていたエキスプローララボが使用できなくなったため、プレハブ冷蔵庫(室内実験設備)を植物園に移設した。29年度は最初に移設先で室内実験を進めるための環境・設備を整え、野外調査、室内実験に臨む。
|