研究課題
基盤研究(C)
フタバガキ科2種について、遺伝実験から種子散布と花粉散布のパターンを推定した。果実の形態的特徴からの予想とは異なり、大きな翼の枚数が多い種で種子散布距離が大きい結果とはならなかった。また、最大花粉散布距離は2種で似た値を示したが、花粉散布頻度の距離依存性は種によって異なった。定着した実生のうち、21.5~26.7%が約4年後まで生き残った。種子散布距離や花粉散布距離が実生の成長や生残に与える影響は検出されず、種子~実生定着の数年間では、食害者に対する飽食効果が生残に有利に働くことが示唆された。
森林生態学
フタバガキ科樹木は東南アジア熱帯雨林の主要な優占種であり、多くの有用材を含む分類群であるため、その更新特性は持続的利用や保全に欠かせない基礎情報である。比較的多くの報告がある花粉散布距離に比べて、種子散布距離の知見は非常に限られているため、本研究の成果は意義深いが、一度の繁殖イベント由来の限られた種のみでの結果であるため、より多くの種を用いた更なる検証が必要である。また、より正確な種子散布距離の推定のために、遺伝実験に用いるべき試料への課題も見つかったことから、今後の発展も望める。