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2017 年度 実施状況報告書

性的形質の地理的変異を創出する進化要因の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K07519
研究機関鳴門教育大学

研究代表者

小汐 千春  鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 助教 (60263878)

研究分担者 立田 晴記  琉球大学, 農学部, 教授 (50370268)
高見 泰興  神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60432358)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード性選択 / 個体群間変異 / 形態解析 / 性的対立
研究実績の概要

すでに採集済みのフタイロカミキリモドキの23個体群(南西諸島および本州・九州・四国)について,雌雄の後脚と体サイズの指標である前翅長を計測し,直線回帰によるアロメトリー解析を行い,さらに緯度との関係について調べた。その結果,特に細い奄美群島を除く個体群に関しては高緯度になるほど後脚が細くなる傾向が見られることがわかった。また,雌雄の形態について相関するかどうか調べたところ,オスの後脚腿節が太い個体群ほどメスの後脚が長くなっていることがわかり,雌雄の後脚形態において共進化が生じている可能性が示された。
系統解析については2016年に引き続いて解析を行い,いったん後脚が太くなった個体群から,後脚が細い個体群が派生的に生じている事,また,地理的には近い場所にある個体群どうしが系統的には必ずしも近くないことを示唆する結果が得られている。
また,2016年に引き続き,後脚形態と配偶成功の関係を更に調べるために,後脚の太さが異なるが系統的には比較的近い奄美と沖縄本島北部の個体群に関しては個体群間で雌雄を入れ替えて交尾率を測定する実験を行った。その結果,この2個体群間ではメスの抵抗行動が異なっているため,後脚が細い奄美個体群のオスでも激しく抵抗する沖縄本島北部個体群のメスと交尾することができ,これら2個体群の形態における大きな変異が配偶行動の違いと関係している可能性が示唆された。
さらにフタイロカミキリモドキの行動と形態についてより理解するために,近縁種であるキムネカミキリモドキの行動や形態についても予備的観察および実験を行った。その結果,フタイロカミキリモドキとは異なる配偶行動を行うこと,また,オスの極端に太い後脚に性選択が働いていることを示唆する結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2016年に行った形態解析の結果を緯度との関係で分析することで,興味深い関係があることがわかった。また,雌雄の形態についても相関する部位があることがわかり,共進化している可能性が示唆されている。系統解析の結果および性選択に関する実験や入れ替え実験の結果の分析により,フタイロカミキリモドキの個体群がそれぞれ興味深い進化過程をたどっていることが明らかとなりつつある。さらには近縁種の形態・行動・性選択を調べる事で,さらにフタイロカミキリモドキの性選択と形態進化を多面的に理解できる基盤ができつつある。これらの一部は国内および国際学会で発表した。以上のような理由により,本研究課題の進捗状況は順調であると判断できる。

今後の研究の推進方策

今後は,性的対立による共進化の要の一つであるメスにとっての交尾コストについて検討するとともに,これまで行ってきた研究の更なる解析と,それぞれの結果の間の関連づけを行う予定である。また,結果の公表については,引き続き国内外の学会で発表するとともに,現在すでに進行中の論文作成を完了し,国際誌で発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
昨年度に引き続き,今年度も系統解析や形態解析における新たな個体群のサンプルの追加が少なかったため,思ったよりも物品費がかからなかった。また,野外調査が順調に進んだこともあって,再調査の必要がなく,旅費も比較的少なく抑えられた。
(使用計画)
平成30年度において,系統解析・形態解析のための新たなサンプルの採集と配偶実験の個体数確保のための旅費およびその解析のための物品費の一部に充てる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] 発達したオス後脚は性的対立によって進化したのか:個体群入れ替え配偶実験による検証2018

    • 著者名/発表者名
      里見太輔,高見泰興.
    • 学会等名
      第65回日本生態学会大会
  • [学会発表] フタイロカミキリモドキOedemera sexualisの 性的形質に見られる種内変異2018

    • 著者名/発表者名
      立田晴記,小笠航,里見太輔,工藤慎一,小汐千春.
    • 学会等名
      第65回日本生態学会大会
  • [学会発表] Phylogenetic origins of dimorphic sexual trait in a beetle Oedemera sexualis.2017

    • 著者名/発表者名
      Tatsuta, H., Ogasa, W., Satomi, D., Kudo, S., Koshio, C.
    • 学会等名
      The 5th International Symposium on Biological Shape Analysis (ISBSA)
    • 国際学会
  • [学会発表] Latitudinal variation of sexual traits in the false blister beetle Oedemera suxualis.2017

    • 著者名/発表者名
      Satomi, D., Takami, Y., Tatsuta, H., Kudo, S., Koshio, C.
    • 学会等名
      The 2017 Congress of the European Society for Evolutionary Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] キムネカミキリモドキの配偶行動と性選択.2017

    • 著者名/発表者名
      松村瑶子,山口綾野,里見太輔,立田晴記,小汐千春,工藤慎一.
    • 学会等名
      日本動物行動学会第36回大会(行動2017)
  • [学会発表] フタイロカミキリモドキにおける発達したオス後脚の多様化機構.2017

    • 著者名/発表者名
      里見太輔,高見泰興,小汐千春.
    • 学会等名
      日本動物行動学会第36回大会(行動2017)
  • [学会発表] フタイロカミキリモドキにおける交尾器形態の個体群間変異.2017

    • 著者名/発表者名
      小汐千春,片渕美菜子,村井美早紀,里見太輔,立田晴記,工藤慎一.
    • 学会等名
      日本昆虫学会第77回大会
  • [学会発表] フタイロカミキリモドキにおける発達したオス後脚のアロメトリー2017

    • 著者名/発表者名
      里見太輔,高見泰興.
    • 学会等名
      日本昆虫学会第77回大会

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公開日: 2018-12-17  

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