研究課題/領域番号 |
16K07521
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
野間口 眞太郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (80253590)
|
研究分担者 |
工藤 慎一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90284330)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 保育行動 / ツチカメムシ / 亜社会性 / 寄主植物利用 / 個体群間変異 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、異なる寄主を利用するミツボシツチカメムシ3個体群において各寄主を利用した場合の繁殖パフォーマンスと保育行動を飼育実験によって定量的に比較することを目的とした.しかし今回、ホトケノザ利用個体群の個体が十分に採集できなかったため、オドリコソウ利用個体群とヒメオドリコソウ利用個体群の2寄主利用個体群間で繁殖・保育形質の定量比較はできたが、3寄主利用個体群間でできたのは繁殖回数の比較だけであった.その結果、以下の事実が明らかとなった:(1)本来の寄主を利用した場合の初回繁殖において、他の2寄主に比較して約3倍の重さの種子を供給するオドリコソウの利用個体群が、ヒメオドリコソウ利用個体群よりも,孵化幼虫当たり節約的な保育投資(栄養卵と種子給餌において)を行う;(2)給餌親に3寄主の種子を選ばせると、栄養量に関して運搬効率の最も高いオドリコソウ種子をより好んで多く運ぶ:(3)生涯繁殖回数は、オドリコソウ利用個体群で最も多く、次にヒメオドリコソウ利用個体群,ホトケノザ利用個体群と続く傾向がある(ANOVA, p=0.0066).Trivers (1974) の理論によると,一子当たりの利益に比較して,将来の繁殖へのコストが大きい程,初期繁殖の子への保育投資を控えるはずである.本実験では、将来の繁殖回数が多く,その分,初期繁殖に対するコストが比較的高いと思われるオドリコソウ利用個体群において,初期繁殖の子への保育投資が節約的であった.この結果は、Trivers (1974) の理論を支持するものである.よって本研究は、Trivers (1974) の保育行動の進化理論を,同種内の個体群間変異によって示すという前例のない証拠を提供できる可能性が高いと思われる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホトケノザ利用個体群について十分に調べることができなかったが,他の2個体群の比較では予測通りの結果が得られた.ただ,繁殖回数については、3個体群の間で比較でき,この結果も予想通りであった.よって,当初計画していた研究の85%の情報は得られたものと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
ホトケノザ裏陽子多群として新しい地点を今期に見つけたので、次の繁殖季節には3個体群の比較ができ,本年の補償と追試が行えると考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
1つの寄主個体群の採集個体が少なかったため、餌の必要量が予定より少なくすんだことと、その他の実験器具の中でリサイクルして使用できるものがあったため、消耗物品費を節約できたことが原因と思われる.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度では、当該年度に採集不十分であった寄主利用個体群の実験を追加補償的に行う予定であり,餌や実験器具の追加分の消耗物品費として利用するつもりである.
|