研究課題/領域番号 |
16K07522
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
浦部 美佐子 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50263421)
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研究分担者 |
吾妻 健 高知大学, 医学部, 特任教授 (40117031)
三浦 収 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60610962)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子系統 / Structure解析 / 適応放散 |
研究実績の概要 |
本年度は次世代シーケンサーを用いた全ゲノムによる琵琶湖産カワニナ類の系統解析,pk-Int2領域の分子系統、および次世代シーケンサーを用いた遺伝子浸透の予備的解析を行った。 全ゲノムによる系統解析の結果、琵琶湖固有種14種(残りの1種は種としての存在が疑わしい)は、大きく2つの系統に分かれることが示され,従来の解析結果が支持された。また、固有種のどちらの系統においても、沖合や島嶼に分布する種は初期に、沿岸に分布する種は近年に分岐したことが明らかになった。この成果は現在国際誌に投稿中である。 また、pk-Int2領域に関しては,非固有種のカワニナ類(カワニナ・チリメンカワニナの2種)に関しては,単一の系統を形成せず,固有種群の間に入り交じった複数の系統となることが判明した。このことから、pk-Int2領域は従来解析されてきたITS-1領域よりもさらに多型が多く、複雑な様相を呈することが予測された。また、一部の固有種カワニナ個体群で従来のプライマーによる増幅ができず、プライマー結合部分に塩基置換が存在していることが示唆された。本年度、プライマーの再設計を行って解析をやり直す予定である。 遺伝子浸透の予備的解析として、過去にITS-1の解析結果から交雑の可能性が高いと判断したハベカワニナ・チリメンカワニナの同所分布個体群を用いたStructure解析を行った。しかし、予測に反し,解析に用いた20個体の間に、遺伝子浸透の兆候はみられなかった。Pk-Int2および従来のITS-1領域の結果と合わせると、今までの数百塩基の配列の解析によって得られた種内・種間の多型は、大部分が祖先多型である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NGS解析による分子系統については予定通り解析を完了し、論文を投稿中である。 pK-Int2領域の解析については,新たに分析した個体群の一部でPCRの失敗が続いたことからやや分析が遅れているが,原因はプライマーの不適合であることがほぼ特定できたため、今年度の研究方針は決定している。 遺伝子浸透の解析については,当初予定していたマイクロサテライト解析からNGSを使用した解析に変更したため、プライマー開発の必要がなくなり、予備解析は順調に行われた。
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今後の研究の推進方策 |
pK-Int1領域については、本年度、新規開発プライマーを用いて必要なデータを得、固有カワニナ類の主要な種類について、種内多型を解析する予定である。 遺伝子浸透の解析については,本年度さらに多くの種・個体群を対象としてStructure解析を続行する。その際,あらかじめITS-1領域およびpk-Int2領域を解析し,ヘテロ接合であることを証明した個体を優先的に用いてNGS解析を行う予定である。これにより、ITS-1領域およびpk-Int2領域にみられる種内多型が交雑によるものか、祖先多型によるものかを明らかにする。 種内多型が交雑によるものであると判明した場合,予定通り、遺伝子浸透の見られる個体群を用いて寄生虫Genarchopsis属の感染実験を行い,交雑と遺伝子浸透の関係について解析する。種内多型が交雑ではなく祖先多型によるものである場合,当初の研究計画にあった人工感染実験の意義が消滅するので、今後の研究計画の再検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
pk-int領域のPCRの成功率が低く、当初予定していたサブクローニング解析まで到達できなかったため,そのために計上した遺伝子解析の消耗品費が大幅に残ることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
PCR失敗の原因はプライマー結合部位の配列に個体群環変異があることが理由であるとほぼ確定できたため、本年度は最初にプライマーの新規設計を行い、それを用いて再度pk-Int2領域の多型解析を行う予定である。高い割合でヘテロ接合個体が出現すると見込まれ、これらについてはサブクローニングを行って塩基配列を決定する。
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