研究課題/領域番号 |
16K07526
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
坂田 剛 北里大学, 一般教育部, 講師 (60205747)
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研究分担者 |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ルビスコ |
研究実績の概要 |
植物の光合成は葉緑体内のCO2濃度に強く制限を受けている。アポプラスト液相から葉緑体内の酵素(ルビスコ)へのCO2輸送に生体内のポリアミンが促進し,光合成に貢献している可能性がある。そこでまず,ポリアミン溶液に溶解した大気CO2をルビスコが利用可能か検証した。半精製ルビスコ,イタドリの葉の粗抽出液のいずれもポリアミン溶液によってCO2固定反応が進行し,ポリアミン溶液に溶解した大気CO2をルビスコが利用可能であることが明らかになった。 また,葉内のCO2濃度が減少すると,それに応答して光合成能力が上昇する。この応答に,葉内で生合成されたポリアミンが関与しているか,生合成の阻害剤(DFMO)および細胞膜に存在するポリアミン輸送体の阻害剤(PTI)によって検証した。その結果,これらの阻害剤によって低CO2に応答した光合成促進が遅れ,特に高濃度のDFMOによって応答は消失することが示された。これらのデータは葉内のポリアミンが葉肉細胞表面からルビスコまでのCO2輸送を促進し光合成に寄与していることを強く示唆している。 本研究では,強い乾燥ストレスに樹木がさらされている小笠原諸島父島の乾性低木林で,ポリアミンが光合成促進に寄与しているか野外生態系において検証を予定している。本年度は,その予備実験として本土の乾燥した荒地に生育するイタドリを材料に野外実験を行った。その結果,野外生態系においても葉を低CO2状態にさらすと,光合成能力の上昇がおこり,その大きさは葉に含有するポリアミンの量と良い相関があることが分かった。また,小笠原諸島父島において調査対象種の選定を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,計画していた実験の大半を行うことができた。そして,それらの実験の結果は当初に予想していた「葉が合成するポリアミンが光合成に貢献している」ことを強く示唆しており順調な成果が得られつつある。一方で,維管束を通じて葉の外部から運びこまれるポリアミンが光合成に果たす役割については,プロトコル開発と予備実験にとどまっており研究計画から若干の遅れが生じている。以上の理由から,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は葉がCO2不足に陥った際に,葉の内部で生合成されたポリアミンが光合成を促進する機構を,より明確にすることを目指す。そのために,葉の内部でポリアミンがCO2輸送に役立っていることを直接測定する予定である。本測定のための装置は手配済みである。また,小笠原諸島父島では,昨年度にイタドリで行った予備実験と同様の手法を用いて,乾性低木林の構成種が葉の内部で生合成されたポリアミンによって,乾燥ストレス下でも光合成を維持しているか検証を始める。この検証は今年度以降に複数年継続し,気象条件の年較差との関係を明らかにする予定である。維管束による葉の外部から運び込まれるポリアミンの役割については,実験プロトコルの改良を行ったうえで本測定に取り掛かることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に計画していた実験の一部である,「葉の外部から運び込まれるポリアミンの光合成への貢献」を検証する実験プロトコルの確立を終了させることができなかった。そのため,この実験に使用する予定であった物品費の一部を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に計画していた実験の一部(上記の理由を参照)を今年度に実施予定である。昨年度に使用しなかった物品費の残額を今年度に用いて,昨年度行えなかった実験を当初の計画通り実施予定である。
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