研究実績の概要 |
平成28年度までの研究成果として、クオリティの高いチンパンジーiPS細胞株の選別とニューロスフェア(NS)形成培養による神経幹細胞およびニューロンへの分化誘導と維持を達成していた。そこで平成29年度には、iPS細胞から神経幹細胞へと至る分化過程に注目し、初期神経発生動態の分子基盤の解明を試みた。 申請者が利用しているNS形成培養では、培養開始から1週間でiPS細胞から神経幹細胞へと分化する。そこで、その過程における神経発生関連の遺伝子発現変化を継時的(Day 0, 1, 3, 5, 7)に解析したところ、iPS細胞(Day 0)から後期前方エピブラスト(Day 1)、神経版神経上皮細胞(Day 3)、神経管神経上皮(Day 5)、脳胞ラジアルグリア(Day 7)へと段階的に分化していくことが示唆された。さらに、各NSにおけるニューロン分化能についても解析したところ、Day 1 NSではまだ神経系譜へと完全にコミットメントしておらず中胚葉系の細胞の分化が認められるのに対し、Day 3、5では神経系譜へと完全にコミットメントしているもののニューロン分化能は限定的で、Day 7においてニューロン分化能が獲得されることが明らかとなり、遺伝子発現と分化能獲得の変遷の一致が示された。 上記の初期神経発生動態についてより詳細に解析するために、共同研究を介してトランスクリプトームやエピゲノムの解析に着手している。また、チンパンジーiPS細胞と同じプロトコールを用い、ヒトやニホンザルiPS細胞のNS誘導も試みている。
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