研究課題
申請者が開発したダイレクトニューロスフェア(dNS)形成法では、培養1週間でiPS細胞から神経幹細胞を分化誘導することができる。そこで、dNS形成1、3、5、7日目の遺伝子発現についてRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施した。結果、各細胞は①iPS細胞とdNS(1日目)、②dNS(3、5、7日目)の2つに分岐し(1st shift)、次に③dNS(3日目)と④dNS(5、7日目)に分岐する(2nd shift)ことが判明した。また、iPS細胞とdNS(1日目)がグループ1、dNS(5日目)とdNS(7日目)がグループ3として比較的近い関係にあり、dNS(3日目)は中間状態(グループ2)に位置付けられた。そこで、1st shiftと2nd shiftにおける細胞運命について精査したところ、1st shiftでは多能性遺伝子の発現消失と神経発生遺伝子の発現開始が認められ、多能性から神経発生へのコミットメントが誘発されていることが示された。一方、各dNSを用いてニューロン分化誘導を行ったところ、dNS(3日目)まではニューロン分化が乏しいものの、dNS(5日目)以降は高効率のニューロン分化が観察され、2nd shiftではニューロン分化能が獲得されることが判明した。また、dNS形成過程で発現変化量の大きい遺伝子には、神経発生では報告例のないシグナル伝達関連遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子はチンパンジーとヒトで発現パターンが異なり、なかでもJAK/STATおよびEGF経路に関わるある因子は、チンパンジーでは対称分裂期の神経上皮細胞で一過的に発現するのに対し、ヒトでは発現時期が延長されていることを特定した。この因子がヒト神経幹細胞の対称分裂を亢進し、大脳進化とグリオーマリスクに寄与していることが推測されることから、今後は機能解析やグリオーマでの発現解析を行う。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: -
https://doi.org/10.1038/s41598-018-30734-w
academist journal
巻: - ページ: -
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/180815_2.html