研究課題/領域番号 |
16K07536
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
真鍋 義孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (80131887)
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研究分担者 |
小山田 常一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00244070)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯根数 / 時代的変異 / 地域的変異 / 非計測的形質 / 系統間変異 / 小進化 / 歯根融合傾向 / 歯根退化の方向性 |
研究実績の概要 |
現在までに、日本列島における新石器時代から現代に至る過去1万年間にわたるヒトの歯根形態の時代的・地域的変異について明らかにし、これらの変異が生じた要因について集団の形成過程や適応の観点から解釈を行ってきている。本年度は、上顎大臼歯の歯根の退化傾向について、時代的変化の観点ばかりでなく、退化融合傾向がどの方向から起こるかという基本的原理の解明に向けての調査を行った。時代的変化については弥生時代から現代に至る歯根数の時代的変異に関する分析を行い、退化傾向の方向性については退化が強く表れている現代日本人の上顎大臼歯歯根の退化融合傾向の歯種内変異について分析を行った。現代日本人においては、第一大臼歯で3根性97.2%、2根性2.8%、1根性0%であった。第二大臼歯では3根性64.4%、2根性13.8%、1根性21.8%であった。第三大臼歯では、3根性7.1%、2根性25.0%、1根性67.9%であった。さらに、3根性から1根性への退化過程にあると思われる2根性のものについて、頬側2根の融合、近心頬側根と舌側根の融合、および遠心頬側根と舌側根の融合の3様式に分類して、出現率を比較した。上顎大臼歯における歯根の融合傾向は、 第一大臼歯と第二大臼歯では基本的には頬側と近心の2方向から起こる傾向があるが、遠心からの退化の影響を強く受ける第三大臼歯の場合は、遠心からの融合傾向が頬側や近心からの融合傾向を凌駕する傾向があることが示唆された。 平成30年度は、台湾などの日本列島周辺の集団についてデータを採取して、集団間変異についても分析を進めたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標は、日本列島における新石器時代から現代に至る過去1万年間にわたるヒトの歯根数の時代的・地域的変異について、データ収集と分析を行うことである。日本列島の資料としては、北海道、本州、北部九州、南部九州、沖縄における縄文時代、弥生時代、古墳時代、中世、近世、現代の人骨からデータの追加を行った。その過程において、歯根の退化傾向の方向性が第一大臼歯と第二大臼歯および第三大臼歯で異なっていることを発見し、その解明を進めるため、当初予定していたデータよりも詳細なデータの採取を行うこととした。そのため、データの採取に時間がかかり、資料の集団数の確保についてはやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、特に上顎大臼歯の歯根の退化傾向について、当初計画していた時代的変化の観点ばかりでなく、退化融合傾向がどの方向から起こるかという基本的原理の解明に向けての調査を行うことができ、新しい観点に基づく研究成果が得られた。今後は下顎大臼歯についても歯根の退化傾向の方向性に関する詳細な分析を行っていく予定である。 さらに、肉眼よりも観察精度を高めるための方法として昨年度から行っている光ファイバーカメラ観察法による歯根の形態に関するデータを加えて、分析を行いたい。 また平成30年度は、台湾などの日本列島周辺の集団についてのデータを採取して、集団間変異についても分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には海外調査を予定していたが、受け入れ先機関の都合により調査ができなくなったため、未使用の海外調査旅費が次年度使用額として生じた。平成30年度には日本列島周辺の海外調査を行い、海外調査旅費として使用する予定である。
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