研究課題
現在までに、日本列島における新石器時代から現代に至る過去1万年間にわたるヒトの歯根形態の時代的・地域的変異について明らかにし、これらの変異が生じた要因について集団の形成過程や小進化の観点から解釈を行ってきている。本研究では、まず現代日本人の上顎大臼歯の歯根の退化傾向について調査を行い、上顎大臼歯の歯種内の形態形成フィールドにおいてはUM1からUM3への遠心に向かって、歯根の退化による遠心方向への明瞭な融合傾向が認められた。さらにヒトにおける上顎大臼歯の歯根退化融合傾向が1つの歯の中でどの方向から起こっているかという退化の基本的法則を解明するため、歯根数の時代的変異の中で退化が最も強く表れている日本人の上顎大臼歯歯根の退化融合傾向について、歯種内における退化の方向性ではなく、1つの歯内で起こる歯根退化の方向性について分析を行った。上顎大臼歯における歯根の融合傾向は、UM1とUM2では基本的には頬側と近心の2方向から起こる傾向があるが、遠心からの退化の影響を強く受けるUM3の場合は、遠心からの融合傾向が頬側や近心からの融合傾向より優位にはたらく傾向があることが明らかになった。これらの歯根の退化の様相が、各上顎大臼歯の萌出時期ならびに歯根形成時期、そして歯槽骨の発育時期に影響を受けている可能性について検討する観点から新たに分析を進めている。また日本の集団ばかりでなく、他の地域集団においても同様の退化現象が起こっている可能性について分析するため、海外の人骨資料についても調査を進めると同時に,下顎の大臼歯に関しても研究を進めてきた。しかし2019年に発生した新型コロナ感染症の蔓延により国内外の人骨管理施設への移動制限によって,本研究のデータ採取の基本である国内外の施設での調査が困難となったため,数年前より研究が遅滞して,当初予定していたような成果を出すことができなかった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
BioMed Research International
巻: 2022 ページ: 1-10
10.1155/2022/6094663
Anatomical Science International
巻: 97 ページ: 77-88
10.1007/s12565-022-00676-5