研究課題/領域番号 |
16K07537
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤田 志歩 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (90416272)
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研究分担者 |
井上 英治 東邦大学, 理学部, 講師 (70527895)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会構造 / 生活史 / 雄間競合 / ニシローランドゴリラ / コルチゾル / ストレス |
研究実績の概要 |
ゴリラは基本的には単雄複雌群(ハーレム)を形成する。しかし、近年、集団内の成体オスの数は必ずしも単独ではないことが各地の長期研究の結果から明らかになってきた。ゴリラのオスにおける成長に伴う集団からの「移出」はゴリラの社会構造を決定する重要な要素であることから、本研究は、行動学的および生理学的視点をあらたに導入することによって、ゴリラのオスの「移出」のプロセスについて明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、ガボン共和国ムカラバードゥドゥ国立公園で約1ヶ月間の現地調査を行い、行動観察とホルモン(コルチゾル)濃度測定のための糞便試料の収集を行った。現地調査では、対象集団においてシルバーバック(アダルトオス)の消失が起こり、これに伴っていくつかの社会変動が観察できた。具体的には、サブアダルトオスの移出、アダルトメスおよびそのコドモの隣接集団への移籍が起こった。そこで、これまでに採集した糞便試料も含めて各個体のコルチゾル濃度を測定し、集団からの移出と生理状態との関連について検討した。その結果、まず、サブアダルト個体が集団から移出する年齢は、オスでは14.5歳、メスでは9歳であったことから、出自集団からの移出の決定要因はオスとメスでは異なることが推察された。すなわち、オスでは繁殖を巡る雄間競合がはたらき、生理的な性成熟よりやや遅れて移出すると考えられた。次に、コルチゾル濃度の変化と移出のタイミングとの関連について調べたところ、オスメスともにコドモ期に比べてサブアダルト期はコルチゾル濃度が上昇する傾向がみとめられた。ストレスの上昇が集団から移出にどのように影響するかについては、例数を増やしてさらに検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は予定どおり現地調査を実施し、試料およびデータを収集することができた。また、想定していなかったものの、研究対象のゴリラ集団において重要な社会変動が生じたため、これに関連する試料やデータについても集めることができた。対象集団の社会変動は現在なお進行中であり、来年度も引き続き現地調査を行い、観察を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は現地調査で収集した試料の分析を進める。さらに、平成30年度も継続して試料およびデータを収集するため現地調査を実施する。各個体について縦断的に解析を行い、生活史段階における個体の社会関係や生理状態の変化を明らかにし、ゴリラの「移出」のプロセスを解明する。また、平成28年度に得られた研究の成果を国内学会で発表する予定である。
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