研究課題/領域番号 |
16K07540
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
新関 久一 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (00228123)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 起立負荷 / ヒールアップ動作 / 一回拍出量 / 心拍出量 / 周波数解析 |
研究実績の概要 |
筋ポンプ作用は静脈還流量を増し,運動時の心拍出量増加や起立負荷時の脳血流維持に寄与している。しかし,その機能が呼吸ポンプ作用によってどのように修飾されるのか生理学的実証はほとんどなされていない。本研究では,筋ポンプと呼吸ポンプの位相関係が循環系および心臓自律神経系にどのような影響を及ぼすか実験的に検証することを目的とした。 若年健常被験者13名をリクルートした。被験者は座位姿勢を3分間保った後,起立し可能な限り静止起立姿勢(QS)を維持した。起立してから3分後に6秒に1回の頻度で瞬間的な踵上げ動作(HUP)を行った。HUPは6分間持続し,HUPを呼気開始のタイミングに合わせる場合(EXP)と吸気開始のタイミングに合わせる場合(INSP)で比較した。実験中,心電図,腓腹筋筋電図,呼吸流速,一拍毎の血圧を計測した。Pulse Contour法により血圧波形から一回拍出量(SV)を求め,心拍出量(CO)と総末梢血管抵抗(TPR)を算出した。さらに,自律神経活動の変化を推定するために,心拍間隔(RRI)のパワースペクトル解析を行い,副交感神経活動指標(HF)と交感神経活動指標(LF/HF)を求めた。 HUPにより両条件ともSVとCOがQSに比べ有意に増加した。一方,TPRはQSに比べHUPで有意に低下した。RRIはQSに比べHUPで延長する傾向が認められた。EXP条件では収縮期血圧(SBP)が増加した。心臓自律神経活動はEXPとINSP条件で異なる反応を示した。EXP条件ではHUP動作でHFが低下,LF/HFが増加したのに対し,INSP条件ではQSに比べてHFの増大とLF/HFの減弱が見られた。EXP条件では呼息時にHUPによる迷走神経活動の抑制が生じ,吸息時には呼吸中枢由来の迷走神経活動の抑制が生じるため,常に迷走神経活動が抑制されると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の成果として,起立負荷時の筋ポンプと呼吸ポンプのタイミングの違いが循環系ならびに心臓自律神経活動に及ぼす影響を定量的に示すことができた。研究成果は論文に纏め公表しており,計画通りに進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
超音波ドプラ法により中大脳動脈の脳血流速度を同時計測しており,筋ポンプと呼吸ポンプの位相関係が脳血管調節に及ぼす影響について調査する予定である。また,筋ポンプを下腿部に装着したカフのリズミックな加圧操作で模擬することで,随意運動の関与を除外し,筋ポンプ効果におけるセントラルコマンドの寄与を評価する。研究最終年度には国際誌に発表する予定で研究を進める。
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