研究実績の概要 |
動脈が硬化すると血圧が上昇する。日本では高血圧者が最も多いと言われている。一方、ネパールの田舎をはじめ工業先進国化する以前の社会では、加齢にともなう血圧の上昇や高血圧者が認められない集団が多数存在する。 平成28年度は、ネパールにおいて1987年に総合的調査を開始し、高血圧者が極めて稀で、加齢に伴う血圧上昇も認められず、肥満、糖尿病など生活習慣病がほとんど認められない丘陵地農村Kotyang村(標高800~1,200m、Kavrepalanchok District, Panchikal, Municipality 12)において農民の血圧、動脈硬化の指標である中心動脈指数(AVI)、上腕動脈指数(API)、上腕囲などの測定、生活習慣調査などを実施した。動脈硬化指数は20~84歳の男性111名、女性97名から得られた。 収縮期血圧と拡張期血圧が最も高かったのは男性が150mmHgと100mmHg(42歳)、女性が150mmHgと102mmHg(53歳)で、収縮期血圧と拡張期血圧の平均値は、男性が109±13mmHgと68±10mmHg、女性が105±14mmHgと68±10mmHgであった。年齢と血圧の相関は男性では全く有意ではなく、女性では収縮期・拡張期とも有意(p<0.01)であった。動脈硬化指数のAVIとAPIは、日本人のより明らかに低く、男性では年齢と有意な関係は認められず、女性では血圧同様に有意な関係にあった。加齢とともに動脈の硬化が進行するかどうかは男女で異なる結果が得られ、今後さらに詳しい分析を行うとともに、さらに調査地を変えた測定調査を行い、さらなる検討が必要である。
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