研究課題/領域番号 |
16K07542
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
平木場 浩二 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (70173226)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 加齢 / 走運動 / 代謝水準 / 筋電図 / 筋活動 / 筋脱酸素化状態 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、昨年度の若年者群の実験で得られたデータを基準にして、斜度上昇に伴う短縮性/伸張性収縮比率の変化に及ぼす加齢に伴う筋量減少及び部位別筋活動水準の年齢差の影響を検討することを目的に、中・高齢者群(52-67歳)の男性8名を対象にして、昨年度と同様の実験プロトコールにて0%~10%までの斜度漸増運動テストと斜度変化に伴う3種類の強度6分間の一定負荷運動テストを行い、全身性代謝水準、大腿筋、下腿筋及び臀筋の7部位を標的筋として、部位別筋活動水準及び外側広筋の脱酸素化水準を評価した。さらに、大腿筋の周囲径と皮下脂肪厚計測に基づき、Jones & Pearson (1969)の式を用い、大腿筋量の推定を行った。 斜度漸増運動テストでの全身性代謝水準の指標となる1分間当りの酸素摂取量(VO2, ml/min)と斜度(%)の関係を検討したところ、中・高齢者群においては、y = 1800 + 85x(r=0.998)の直線関係が得られ、走速度が一定にも関わらず、斜度を関数としたVO2の直線的増加を確認した。この斜度上昇に伴うVO2の直線的増加を主に標的筋のうち大腿二頭筋、外側広筋及び臀筋の筋活動水準の増加が主導し、高水準の斜度局面(8%~10%)では下腿筋のヒラメ筋の筋活動水準の上昇も関与してくることが確認できた。 一方、昨年度の実験で得られた若齢者群の斜度を関数としたVO2の直線関係(y = 2018 + 109x)と比較・検討したところ、中・高齢者群では斜度1%の上昇に対するVO2増加分が低い値(85 ml/min per gradient 1%)を示し、これは、両群間で斜度上昇走行運動に参加する大腿筋量の差(若齢者:6700 ml vs 中・高齢者:6100 ml)に伴う代謝水準変化の違いもしくは走行技術に依存した部位別の筋活動水準の年齢差が存在する可能性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度における若齢者群の実験にて標的筋として選択した大腿筋群と下腿筋群の5部位の筋活動水準を評価したが、斜度上昇に伴う部位別筋活動水準が個人で大きく変動し、規則性が明確に出なかったことおよび他の測定されなかった筋活動水準も評価する必要があるとのことを考慮して、平成29度は標的筋として臀筋と下腿筋群を構成する前頚骨筋の2部位を追加して7部位の筋活動水準を検討することとした。 平成29年度は、中・高齢者群を対象に、昨年度と同様のトレッドミルによる一定走速度での斜度漸増運動テストと斜度設定による3種類の6分間一定負荷運動テスト時の酸素摂取量による全身性代謝水準、筋電図による標的筋7部位の部位別筋活動水準及び近赤外分光法による外側広筋の脱酸素化水準を評価する実験を行った。若齢者群と中・高齢者群の斜度漸増運動テストにおける全身性代謝水準および部位別筋活動水準の評価を行い、両群の比較検討までは行なった。平成29度に予定していた一連の実験を概ね実施できたと判断している。ただし、中・高齢者においては実験に参加する意思はあっても、被験者の勤務との関係で実験に参加することが困難な人もおり、予定していた被験者は10名中8名に留まった。さらに、データ解析においても、平成28年度の若齢者群のデータの積み残しもあり、それを今年度行う必要があったことから、今年度は中・高齢者群の斜度漸増運動テストにおける全身性代謝水準と部位別筋活動水準の解析は終了したが、残りの斜度変化で設定した3種類の6分間一定負荷運動テストの実験で得られた全身性代謝水準と部位別筋活動水準との関連性や外側広筋の脱酸素化水準と斜度上昇に伴う短縮性/伸張性収縮比率の変化との関連性の検討は次年度に譲ることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、被験者として予定していた中・高齢者群10名中8名の被験者のみの実験実施に留まったことから、今後の若齢者群とのデータの比較・検討に伴うデータ解析等を考慮すると、平成28年度に実施した若齢者群10名の被験者数に揃えるためにも、平成29年度に実施した中・高齢者群8名にさらに2名追加して、一連の実験を平成30年度の7月末頃までには終了する計画を立て、被験者の選定等を行ない被験者との面談を予定しているところである。今後2名に対して一連の追加実験を行い、予定していた生理変量のデータ取得が終了次第、残されたデータ解析を完了させ、2年間に渡り実施してきた若齢者群と中・高齢者群のデータ解析に基づいて斜度上昇に伴う生理変量の比較検討を行い、年齢特性に関する一定の結論を得る計画である。 さらに、一連の実験で得られた研究データの公表の積極的な推進方策として、平成30年8月下旬から9月初旬にかけてヨーロッパで開催される47th European Muscle Conference(Hungary, Budapest)国際会議での発表を予定し、すでに平成30年4月末までに学会事務局に研究抄録の提出を済ませ、その国際会議での研究発表のためのさらなる研究データの解析と発表資料等の準備を行っているとことである。今後は、若齢者群と中・高齢者群の斜度変化設定に伴う3種類の強度の6分間一定負荷運動テストの実験のデータ解析を完了し、国際会議での発表に望む予定である。 国際会議での研究発表後においては、国際会議における討論の結果を踏まえて、必要があれば現在考えているデータ解析とは異なる側面より、新たなデータ解析手法を取り入れて研究を展開できるようにして、海外の学術雑誌に投稿できるよう方策を練っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度においては、被験者として中・高齢者群10名を予定していたが、8名のみの被験者を対象とした一連の実験は終了したが、残りの2名は次年度に実施することとした。従って、今後のデータ解析等を考慮して、中・高齢者群も昨年度実施した若齢者群10名と同数の被験者数に揃える必要がある。また、昨年度積み残した若齢者群の一定負荷運動テストのデータ解析を平成29年度中に優先させたことから、平成29年度に取得した一連の実験のデータ解析のうち、斜度漸増運動テストの全身性代謝水準と筋電図解析による標的筋の部位別筋活動水準に関する解析を終了させることは出来たが、斜度上昇変化による3種類の強度における一定負荷運動テスト時の全身性代謝水準、部位別筋活動水準および外側広筋の脱酸素化状態の評価と解析は時間的制約もあり、今年度は実施・完了できなかった。 今後は、中・高齢者群群の被験者としての2名の候補者の選定を行い、予定被験者との面談を5月末までには終えた後、実験実施時期を確定し、7月末までには終えたいと考えている。従って、次年度使用額約14万円の使用計画においては、中・高齢者群の残り2名の被験者に対しての一連の追加実験(4回/人×2人=8回)と生理変量のデータ取得を平成30年度の7月末までに完了させるための人件費と消耗品費に当てるとともに、得られた実験データの解析に対する人件費としての使用を考えている。
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