研究課題/領域番号 |
16K07544
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
横山 久代 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 准教授 (10647829)
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研究分担者 |
岡崎 和伸 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 教授 (70447754)
今井 大喜 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 講師 (40614483)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 中枢インスリン作用 / 臓器間ネットワーク / 運動時エネルギー代謝 / 脂肪酸化率 |
研究実績の概要 |
本研究において、鼻腔内インスリン投与による脳内高インスリン状態が運動時の脂肪酸化にもたらす効果と、その効果に対する過体重の影響について検討を進めている。 【方法】正常体重(N群、11名)ならびに過体重(BMI ≧ 25 kg/m2、O群、7名)の若年健常者に対し、インスリン(INS)ならびにプラセボ(PL)の2試行を実施した。朝絶食にてレギュラーインスリン(40単位)または生理食塩水を鼻腔内に投与したのち、漸増運動負荷試験を実施した。間接的熱量測定の結果から、個々の対象において運動強度対脂肪酸化率の二次曲線を作成し、運動中の最大脂肪酸化率(max FOR)とその際の運動強度(FATmax)を求めた。2試行間における差について、paired t検定または反復測定のtwo-way ANOVAを用いて検定した。 【結果】血中グルコースおよびインスリン濃度は鼻腔内投与により変化しなかった。N群において、max FORはINSでPLに比し低値となる傾向を示し(3.43 ± 0.30(SE) vs. 2.79 ± 0.21 mg/kg/min, p = 0.050)、FATmaxと運動中の総脂肪酸化量は、INSで有意に小さくなった。O群のmax FOR(2.48 ± 0.22 mg/kg/min)はN群に比し小さく(p = 0.021)、鼻腔内投与による影響を受けなかった。N群においてのみ、運動負荷終了時の血中アドレナリン濃度の上昇がINSにより抑制される傾向を示した。 【結語】鼻腔内インスリン投与は、血中インスリン濃度を上昇させることなく運動時の脂肪酸化を抑制した。脳内高インスリン状態は交感神経系の抑制を介して、運動時の脂肪動員を抑制する可能性が示唆された。一方、運動中の脂肪酸化抑制効果が過体重で消失したことから、過体重では脳内インスリン作用が減弱している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、それまでの若年健常者を対象とした実験を進めつつ、一部、中高年を対象とした実験にも着手する予定であったが、中高年を比較対象とした場合、脳内インスリン作用に対する年齢と末梢インスリン抵抗性それぞれの影響を区別することが困難であると判断した。このため、同年代かつ、末梢インスリン抵抗性を獲得していると想定される過体重もしくは肥満を対象とした実験を進め、脳内高インスリン状態が運動時の脂肪燃焼にもたらす効果に対する過体重の影響について検討することを試みた。
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今後の研究の推進方策 |
若年健常者を対象とした実験と比較して、過体重・肥満を対象とした実験実施が依然予定件数に至っておらず、ひきつづき実験を進める。同時に運動中の血中グリセロールならびにレプチン濃度の測定・分析を進め、交感神経系ならびに内分泌学的機序の関与について検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)実験や生化学分析に必要な消耗品の購入費用の一部は他の財源より支出したため次年度使用額が発生した。 (使用計画)過体重もしくは肥満を対象とした実験をさらに進める予定であり、これに伴い発生する謝金と血液検査委託費に充当する。また、血中グリセロール・レプチン測定キットの購入経費に充てる。さらに研究成果の発表を行うための国際学会旅費、論文投稿料として支出予定である。
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