研究課題/領域番号 |
16K07549
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
犬飼 剛 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90223239)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イネ / いもち病 / 圃場抵抗性 / クローニング |
研究実績の概要 |
qBRM6.2候補遺伝子の転写開始点より上流約1kb及び転写終結点を含むゲノム領域をクローニング後、発現ベクターpBract204に組み込んでイネ品種日本晴に導入し、形質転換個体を約20個体得た。対象とする形質は圃場抵抗性で量的な形質なためヘテロ型において表現型を正確に判定することは難しいことから、形質転換体当代ではなくその次世代(T1系統)で、まずいもち病抵抗性に関する系統内の分離を調査した。その結果、いくつかの系統で量的な抵抗性を示す個体と日本晴レベルの罹病性を示す個体が分離しているのが確認されたため、分離系統の中からさらに抵抗性と考えられる個体を選抜し、採種後T2系統内の分離を調査した。その結果、少なくとも3系統は抵抗性で固定していることが確認された。これら系統は接種したいもち病菌に対して量的な抵抗性を示すことが確認されたことから、qBRM6.2は候補として推定したいもち病真性抵抗性遺伝子Pid3の複対立遺伝子であると考えられた。 qBRM6.2の単離に先立ち、qBRM6.2に関するインディカ型品種CO39の準同質遺伝子系統を用いてqBRM6.2の機能に関する解析を行った。qBRM6.2の候補遺伝子がいもち病真性抵抗性遺伝子であることから、qBRM6.2による抵抗性も誘導抵抗性であることが想定されたため、いもち病菌接種前後におけるPR geneなどの防御遺伝子の発現量を調べその応答パターンを調べたところ、一部の遺伝子ではいもち病菌の感染に応答して発現量が増大することが明らかとなった。従って、qBRM6.2にコードされるRタンパクはいもち病菌もしくは宿主由来の因子を認識して抵抗性を誘導する機能をもっているのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、目的の一つであるイネのいもち病圃場抵抗性遺伝子qBRM6.2の単離に成功し、qBRM6.2がいもち病真性抵抗性Pid3の複対立遺伝子であることを明らかにした。また、この証明実験のために作成した遺伝子組換え系統を用いて次年度以降の実験を進める予定であり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
qBRM6.2による圃場抵抗性の特徴を精査するため、qBRM6.2を日本晴に導入した得られた形質転換系統3系統を用いて以下の実験を行う。1)レースに対する非特異性: 複数のいもち病菌レースに対する反応を調べ、レースに対する特異性の有無を明らかにする、2) 防御遺伝子の発現パターン: 日本晴に対して病原性を示す菌系及び非病原性を示す菌系をそれぞれ接種して、防御遺伝子の発現パターンが真性抵抗性発現時とどのように異なるのか明らかにする、3) 白葉枯病菌に対する抵抗性の有無: 多面作用として白葉枯病菌に対しても量的な抵抗性を示すか調べる、4) qBRM6.2と相互作用するタンパクのスクリーニング: 日本晴からSMART法によりpGADDT7-Recベクターを用いてcDNAライブラリーを作成し、このライブラリーの中からqBRM6.2と相互作用するタンパクをGAL4 yeast two-hybridシステムを用いてスクリーニングする。検出された陽性クローンについて共免疫沈降法によりqBRM6.2との相互作用を確認する。相互作用の確認されたタンパクに関しては、真性抵抗性遺伝子Pid3及び劣性遺伝子pid3との相互作用を同様な方法で確認し、それらがqBRM6.2と特異的に相互作用しているのかどうか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用の試薬類などの支出がかさみ、当初購入を予定していた人工気象器の購入が難しい状況となった。一方、研究は順調に進展したため、当初必要と考えていた人工気象器の購入がそもそも不要となった。そのため、経費残額を次年度使用額として次年度予算に回し、試薬類の購入に当てることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は次年度予算の一部と合わせ、主に実験用の試薬類の購入に充てる。
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