本研究では、植物の生殖細胞系列においてトランスポゾンが活性化されるしくみを明らかにする事を目指し、花粉で高頻度に転移するミヤコグサのレトロトランスポゾンLORE1aについて解析している。今年度は主に、 (1)LORE1a転写レベル上昇変異体の解析、(2)種間交雑組換え近交系(RI)集団におけるLORE1a活性化個体の解析を行った。 (1) 昨年度、ミヤコグサのLORE1a挿入変異集団から選抜したエピジェネティクス制御系遺伝子の変異体の中で、LORE1aの転写レベルが上昇していた系統を見出した。この系統について詳細を解析したところ、少なくとも3つのエピジェネティクス制御遺伝子が破壊されていることがわかった。これらの変異とLORE1aの転写レベルとの関係について解析したところ、small RNAの代謝に関わる遺伝子の変異とLORE1a転写レベルとの間に相関が見られた。また、さらなる変異体の同定を試みたが、これまでのところLORE1aの転写上昇が明らかな新しい変異体を見出すには至っていない。 (2) について、種間交雑RI集団の中でLORE1aが転移していた系統について、F4以降の世代間でLORE1a転写レベルの比較を行なった。その結果、基本的に後期の世代になるにつれて転写レベルが上昇していた。この種間交雑RI集団の96系統について、全ゲノムショートリードが解析され公開されている。それらのデータを解析したところ、LORE1aが転移している系統が6系統見出され、そのうち5系統については今回の解析により初めてLORE1aの転移が明らかとなった。
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