研究課題/領域番号 |
16K07557
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
門田 有希 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (30646089)
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研究分担者 |
田淵 宏朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (10355571)
牛島 幸一郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20379720)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サツマイモ / Iso-Seq / ロングリード / 網羅的解析 / 非モデル作物 / 完全長cDNA |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、PacBioおよびIllumina等の高速シーケンサーを駆使し、サツマイモの完全長cDNA配列の決定さらには有害線虫抵抗性に関わる網羅的な遺伝子発現解析を行うことである。サツマイモはゲノム配列、遺伝子アノテーション情報等十分に整備されておらず、農業形質に関わる有用遺伝子はほとんど同定されていない。そこで本研究では農作物の収量・外観品質に甚大な被害をもたらすサツマイモネコブセンチュウに注目し、その抵抗性・感受性品種を対象にIso-Seq、RNA-seq等行う。これにより非モデル作物種の参照cDNA 配列を一から構築・整備し、さらにはストレス抵抗性関連遺伝子の発現情報や配列多型情報も獲得する、という一連の解析モデルを示す。 該当年度の研究内容は、PacBioのロングリードシーケンスを利用し、転写産物に関する参照配列を構築することであった。まずは、サツマイモの植物体全組織からTotal RNA を抽出し、シーケンス用ライブラリを作製した。RNA抽出については研究分担者である田淵主任研究員が担当した。その後、SMARTer PCR cDNA synthesis kit を用いた逆転写により全長cDNA を作製し、PCRを行った。得られたPCR産物については2段階のサイズセレクション(<2kb, >2kb)を行った。回収された産物を再度増幅し、末端修復反応およびアダプター付加等を行いPacBio シーケンス用のライブラリを作製した。作製したライブラリについてはPacBio RSII を用いシーケンスを行った。SMRT Linkによりロングリードの解析を行い、アイソフォームを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究についてはおおむね順調に進展したと思われる。当初の予定通り、PacBioシーケンス用のライブラリを作製し、シーケンス解析も終えることができた。サツマイモから核酸を抽出する時期が予定より遅れてしまったが、その後の作業(核酸抽出、ライブラリ作製、シーケンス)は比較的スムーズに進んだと思われる。ただ、ロングリードの解析は初めての経験だったこともあり、解析環境の構築や、PacBio特有のデータフィーマットの理解には苦労した。これについては各種講習会や研究集会にも参加し積極的に情報を収集するとともに、研究分担者である牛島准教授とも活発に意見交換することで、問題を解決することができたと思われる。シーケンスにより得られたロングリードに関して、アイソフォーム構築までの一通りの解析は、ある程度行うことができた。しかし、解析条件等を十分精査できたとは言えず、より信頼性の高いデータを得るため、パラメーター設定をいくつか変えるなど、様々な解析条件を試す必要があると考えている。また、各種データベースや解析用ツールを利用し、構築した完全長cDNAの機能アノテーションなども行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
PacBioのロングリードに関する解析については、より精査し、信頼性の高い完全長cDNA配列を構築したいと考えている。またアノテーション等も行い、転写産物に関する参照配列を整備する。一方今年度からは、複数品種を用い、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)への抵抗性機構解明に向けた大規模なRNA-seq解析も行う予定である。材料はネコブセンチュウ抵抗性品種「ジェイレッド」と感受性品種「潮州」を用いる予定であり、これら品種をコントロールおよび線虫接種条件下で複数個体栽培し、植物組織のサンプリングを行う。サンプリング組織からTotal RNA を抽出し、Illumina TruSeq RNA Sample Prep kits v2 を用いRNA-seq 用ライブラリを作製する。なおサンプリングとシーケンス(HiSeq2500 を利用)は少なくとも二年間行い、反復を設けることで信頼性の高いデータを得る。HiSeq2500 によるシーケンスで得られたショートリードは、以下の手順で解析する。まずはアダプター配列、PolyA 配列および重複配列の除去等前処理を行う。さらにクオリティスコアによるフィルタリングも行い信頼性の低いリードは除く。これら前処理を行ったリードは、先行研究で作成した完全長cDNA 配列にマップし(TopHat2.0 等利用)、サンプル間の遺伝子発現パターン・発現量等の比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
シーケンス価格が下がっているため、当初予定したよりもシーケンス費用が掛からなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの繰り越し分については、今年度から開始するRNA-seq解析に回す予定である。シーケンスデータを十分確保し、信頼性の高いデータを得たいと考えている。
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