研究実績の概要 |
サツマイモはゲノム配列、遺伝子アノテーション情報等十分に整備されておらず、農業形質に関わる有用遺伝子はほとんど同定されていない。そこで本研究では、PacBioおよびIllumina等の高速シーケンサーを駆使し、サツマイモの完全長cDNA配列の決定さらには有害線虫抵抗性に関わる網羅的な遺伝子発現解析を行う。 Iso-Seqの解析では、サツマイモネコブセンチュウ抵抗性品種である「ジェイレッド」のTotal RNAを用い、シーケンスライブラリーを作成した。PacBio RSII システムの12smrt cellsを用いたシーケンスの結果、合計1,296,320のコンセンサス配列(平均長;2,791bp)を得た。さらにクラスタリング及びクオリティフィルタリング等行い、54,492個の高精度なアイソフォーム配列を得た。また近年公開されたYang et al., Nature plants (2017)のサツマイモ転写産物データ(IpoBat4)と統合することで100,419の参照配列を構築した。Blast2GOによる機能アノテーション解析の結果、100,419の転写産物のうち, 72,599 の転写産物(79.3%) がGO-Slimでアノテーションされた。さらに、いくつかの遺伝子配列を対象にRT-PCRを行い、構築データの有効性を検証した。 RNA-seqの解析では、抵抗性品種「ジェイレッド」と感受性品種「潮州」を対象に線虫接種・非接種の条件で経時的にサンプリングを行った。HiSeq4000によるシーケンスの結果、555,137,894リードが得られた。前処理を行った後、Iso-Seq解析で構築した参照配列にマッピングすることで発現変動遺伝子を同定した。さらに先行研究で得られているQTLやGWASの結果を利用し、線虫抵抗性に関わる候補遺伝子を特定した。
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