研究課題/領域番号 |
16K07562
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
早野 由里子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 病害研究領域, 上級研究員 (90414739)
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研究分担者 |
川原 善浩 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター 基盤研究領域, 主任研究員 (30546370)
前田 英郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 作物開発研究領域, グループ長 (40442751)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イネ / 縞葉枯病 / 抵抗性 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
今年度は、イネ縞葉枯病抵抗性の主座であるStvb座に座乗する対立遺伝子の単離とその異同を検討した。さらに、Stvb座による抵抗性を強化するStva座領域の配列情報の収集・解析を中心に研究を進めた。 既報の縞葉枯病抵抗性遺伝子のほとんどが、イネ第11染色体の同位置に座乗している。そこで、縞葉枯病抵抗性の主座はイネ第11染色体に座乗するStvb座であり、Stvb座は複対立遺伝子群を形成しているとされる。しかし、それらStvb座にコードされる遺伝子の異同は明らかとなっていない。そこで、Stvb座に座乗する他の遺伝子に対してもStvbと同様に強化することが可能であるかを推測するため、抵抗性日本陸稲「陸稲農林24号」、インド型イネ「Modan」および抵抗性野生イネOryza officinalisと、由来の異なるStvb座対立遺伝子を単離し、遺伝子構造およびイネ植物体における発現を検討した。あわせて、感受性日本品種「日本晴」および「ユーカラ」のStvb座の感受性型遺伝子についても単離し、比較検討に供した。本成果の一部は、日本育種学会にて口頭発表を行った。 また、日本陸稲に由来し、イネ第2染色体に座乗するStvaは、同じく日本陸稲のStvbの縞葉枯病抵抗性を強化する。Stva導入によるイネ品種の縞葉枯病抵抗性強化が期待される。しかし、Stvaについては解析が十分でなく、マーカーも不足している。そこで、Stvaを保有するコシヒカリ近中四SBL1号および中系IL9号の次世代シークエンスを取得し、コシヒカリ(感受性品種)ゲノムとの比較解析、両品種・系統の第2染色体における陸稲由来領域の限定を行った。また、コシヒカリ近中四SBL1号由来BACライブラリーを作成し、当該座乗領域(約1.6Mb)をカバーする12クローンを選抜した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの遺伝解析で明らかとなっているStva座乗領域が1.6Mbとやや長大であるため、BACクローンの選抜および確認作業に予定よりも時間を要した。計画していた「オワリハタモチ」のゲノムシークエンスの利用が困難となったため、複数品種による次世代シークエンス比較解析は、外注したStva保有品種のゲノムシークエンスの取得後に行った。そのため、発現解析の比較検討によりStva遺伝子候補とした3遺伝子領域の重点的な構造解析を行った。 一方で、次年度以降に予定していたStvb座対立遺伝子の構造解析を前倒しで行った。Stvb(陸稲由来)、Stvb-i(インド型イネ由来)Stvb座抵抗性対立遺伝子のStvbおよびStvb-iの構造比較を実施し、高い共通性があることを見出した。これに基づき、野生イネO.officinalisに由来する抵抗性の解析にも着手した。また、今後の解析のために、O.officinalisに由来する抵抗性を有する抵抗性系統「和2128」の次世代ゲノムシークエンスを取得した。 以上により、概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
縞葉枯病の蔓延による対策および縞葉枯病抵抗性強化を目的に、Stva導入した新たな抵抗性品種が求められている。Stvb座抵抗性選抜マーカーは開発済みであるが、Stvaについては十分ではない現状に鑑み、次世代シークエンスデータを活用したDNAマーカーの開発に重点的に取り組む。 Stva候補の3遺伝子領域の構造解析が遅れていること、当該遺伝子領域を保有するBACクローンの確認作業に時間を要していることから、当初計画していたゲノム領域による相補性試験ではなく、候補遺伝子の発現解析、発現抑制ベクターの構築および発現抑制系統の作出を行い、Stvaの特定を進める。 Stvaとの組み合わせにより強化されるStvb座抵抗性対立遺伝子については、野生イネO.officinalisに由来するStvb座の遺伝子Stvb-oの単離および発現解析を行う。Stvb、Stvb-i、Stvb-oのゲノム構造および発現解析などによる総合的な比較解析から、現在国内で利用されている3つの主要なStvb座縞葉枯病抵抗性遺伝子(Stvb、Stvb-i、Stvb-o)の関係に関する知見を得る。Stvaとの組み合わせに最適なStvb座抵抗性対立遺伝子をより詳細に解析することで、効率的な抵抗性強化のための基盤を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額はベクター構築および形質転換実験に要する消耗品などの支出がなかったため発生した残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額438,466円は、次年度に申請する金額と併せて、研究計画遂行のために使用する。
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