研究課題/領域番号 |
16K07568
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
春原 由香里 筑波大学, 生命環境系, 講師 (00302539)
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研究分担者 |
松本 宏 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10199888)
岩上 哲史 京都大学, 農学研究科, 助教 (00761107)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物生育促進作用 / β-カリオフィレン / γ-テルピネン |
研究実績の概要 |
植物生育促進作用を有する植物由来の揮発性物質の探索を目的とし、本年度は主にハーブやスパイス等を用いて揮発性物質の探索を実施した。活性の評価にはレタス幼植物体を用いてスクリーニングを実施し、茎葉部と根部のいずれかに対して生育促進効果のある植物種を選抜した。その後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて、その部位から生成される揮発性物質の同定を行った。同定された揮発性物質は標品を用いた生物試験を実施し、β-カリオフィレンとγ-テルピネン等が比較的高い植物生育促進活性を有する物質として見出された。そこで、まずβ-カリオフィレンとγ-テルピネンの植物生育促進作用における植物種間差や特徴を調べた。β-カリオフィレンやγ-テルピネンによる植物生育促進効果は、トウモロコシやシロイヌナズナではやや低く、レタスではより高い効果が現れた。また特徴として、レタスではγ-テルピネンやβ-カリオフィレンの処理により、いずれでも根長が促進した。一方、第3葉の葉面積においては、γ-テルピネン処理により増加したが、β-カリオフィレン処理では逆に減少した。また、レタスではγ-テルピネンの処理により、側根数が濃度依存的に増加した。さらに、そのγ-テルピネンの側根の促進作用はオーキシン極性輸送阻害剤(NPA)を添加すると抑制された。このことから、γ-テルピネンによる側根数の増加にはオーキシンの極性輸送が関与している可能性も示唆されたが、これについては、さらに詳細に調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予想と異なり、β-カリオフィレンとγ-テルピネンによる植物生育促進効果が発現しにくい植物種も多く、また、植物生育促進効果が認められた植物種においても、効果の安定性が低く、安定した効果が認められる条件を見出すのに時間がかかってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
β-カリオフィレンとγ-テルピネンによる植物生育促進効果は、成長の比較的早い植物種において高い効果が現れる傾向が認められたため、より効果が高く、かつ今後の実験に利用しやすい植物種の再検討を行う。その後、その植物種を供試植物として、植物生育促進メカニズムの解析を行う。さらに、植物成長促進作用と耐病性を併せ持つβ-カリオフィレンとγ-テルピネン以外の天然由来物質の探索も継続して実施し、新規の植物成長調整剤開発に応用できる可能性のより高い物質を選抜し、その作物への作用の特徴や作用メカニズムについても解析していく予定である。
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