研究課題/領域番号 |
16K07569
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
和田 義春 宇都宮大学, 農学部, 教授 (80201268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダンチク / エネルギー作物 / 光合成 / 耐旱性 / 耐湿性 / 耐塩性 |
研究実績の概要 |
平成29年度には,ダンチク日本系統3系統(口之津,知念,海士),欧州系統4系統(サンディエゴ,マルセイユ,クレタ島,クロアチア)を供試して,葉緑素値とクロロフィル蛍光値(Fv/Fm)を指標として,耐旱性と耐塩性の系統群間差異を検討した.耐旱性については,明確な品種間差異は認められなかった.耐塩性については1/2000aポット土耕栽培(容量10L)あたり海水に近い3%NaCl溶液を5L灌水する方法で比較したところ,欧州系統の方が高い傾向にあったものの,日本系統にも高いものがあった.その原因は不明であるが,株の大きさや根の張り方などが影響した可能性があるので再検討が必要である.また,ダンチクがどの程度の土壌塩分濃度まで耐えられるかについて土耕栽培で試験したところ,海水の1/2程度の約300mMまでは生存可能と判断されたが,土耕栽培では土壌溶液の塩分濃度を正確に設定できなかったことから今後水耕栽培を試みて再検討する必要がある.さらに,ダンチクの耐塩性について,昨年度のNaに加え,他の陽イオンおよび陰イオンの器官別移行を調査した.対照植物のイネやオオムギでは塩処理下で地上部の葉身や茎のNa+含有率が高まるにつれK+含有率の低下がみられたが,ダンチクでは葉身や茎のK+含有率に影響がないことが分かった。Cl-含有率についても, Na+同様,ダンチクでは塩処理下で根や根茎中のCl-含有率は高まるものの地上部の葉身や茎のCl-含有率は低く保たれていることが分かった.また,塩処理下でダンチク葉身や茎のNa+含有率はCl-含有率よりも低いことが明らかとなった.このことは,ダンチクにおいては塩処理下でNa+やCl-の地上部への移行が阻害されていると同時に,地上部からNa+の排除が行われている可能性を示唆する.ダンチクの耐塩性のメカニズムについてさらに水耕栽培などを用いて検討したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,ダンチク光合成について日本系統と欧州系統を供試して耐旱性,耐湿性など水分耐性と耐塩性について検討を行い,一昨年度と一致した結果を得たので,ダンチクの水分耐性について学会発表した.耐塩性については,さらに検討すべき課題が残ったが,陽イオンと陰イオンの分析を行い大変興味深い結果を得ており,全体としてはおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
ダンチクの耐塩性について,メカニズムの解析を行いたい。そのために,まずダンチクの水耕栽培システムを確立し,塩分濃度を一定とした条件で,光合成などの生理機能の推移およびイオンの吸収と移行を調査する。次に耐塩性のメカニズムとして,塩による浸透圧ストレス(吸水阻害)と塩の直接の害作用(Na毒性,K不足)に分けて検討したい.さらに地上部へのNa移行阻害にかかわる茎基部の構造や塩の排除について検討を行う予定である。 これらを通じてダンチクの光合成に対する環境ストレス耐性について総括したい.
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