研究課題/領域番号 |
16K07576
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
有馬 進 佐賀大学, 農学部, 教授 (90140954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 麦わら / 雑草 / 発芽抑制 / 他感物質 / 水田二毛作 |
研究実績の概要 |
水田二毛作(稲・麦)の麦作後の麦わら処理が、水稲作の雑草発生の消長に及ぼす影響を、麦わらの含有成分を中心に検討した。本年は、麦わらの焼却と鋤込み後の田面水がコマツナ等の検定植物での発芽を抑制した(日作紀85.2.P122)ことから、処理後の早い段階で水中に何らかの発芽抑制物質が浸出していると予測された。そこで、麦わらの水抽出液に含まれる生長抑制物質について、フェノール類を中心に同定し含有量推定と発芽抑制の検証を行った。試験方法は、シロガネコムギの麦稈を供試し、麦稈50kg/a相当量の焼却区・鋤込み試験区ならびに麦稈無施用区を設け、24時間後に田面水を採取し、PLCで分析した。また、LC/TOF/MSを用い、麦わら中の含有が確認されているフェノール14種について、田面水中への浸出を確認した。 その結果、 HPLCでは,いくつかの物質を検出したが、フェノール性物質とは異なっ.一方,LC/TOF/MSでは、Ferulic acid, p-Coumaric acid, (±)-2-Phenylpropionic acid, 3-Phenylpropionic acid、Gallic acid anhydrate が含まれていることが確認され。これら5種類のフェノール性物質について,これまでの試験結果から,水田雑草や直播水稲,コマツナ等検定植物の発芽や幼芽伸長への作用機作から想定される傾向を示す物質,言い換えれば,麦わら無施用区に全く含まれていないか極めて含有量が少なく,すき込み区で一定の含有量が確認され,焼却区でその中間的な含有量を示した物質は,(±)-2-Phenylpropionic acidのみであった. なお、日本作物学会紀事85巻2号(2016年4月発行)に研究論文「米麦二毛作における麦わらの処理方法が水田雑草の発生量と水稲の生育に及ぼす影響」を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化学分析手法による麦わらの雑草抑制成分の抽出と、その物質の発芽抑制の検証のデータを積み重ねる中から、より信頼度の高い結果取得を目指している。しかし、分析点数を増加させるられず、結果の信頼性を高める点で、進捗が遅れている。今後は、効率的な分析手法を確立して、分析点数・分析種類数を増加させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
雑草抑制成分の検証を、現時点では、雑草以外のレタスやコマツナ等を供試しているが、やはり、実際に雑草害として防除対象となっている水田雑草を供試し、また出来るだけ、実際の水田条件を再現した発芽条件下において実施する必要がある。 また、実験室内における検証試験を実施する一方で、現地における麦わら処理作業と雑草発生に関わる生産生態的な視点でのデータ収集を実施したい。 なお、本年度は、昨年度の結果を纏めて、日本作物学会紀事に研究論文「米麦二毛作における麦わらの処理方法が水田雑草の発生量と水稲の生育に及ぼす影響」の続報を投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の機器分析実験において、機器トラブルによる実験中断のために、やむを得ず、分析を次年度送りとしたために、試薬等の購入費を持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の実験持ち越し分の実験は、平成29年度に実施するために、そのための持ち越し経費として平成29年度分とあわせて予算執行する。
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